滋賀県

「政所六ヶ畑」(東近江市)

紅葉の名所・永源寺から鈴鹿山脈に向け、愛知川沿いの八風(はっぷう)街道で山ひだを分け入ったところに政所がある。政所を中心とした周辺の九居瀬、黄和田、箕川、蛭谷、君ヶ畑の6集落が「政所六ヶ畑」と呼ばれ、茶摘み歌に「宇治は茶所、茶は政所」と歌われた「政所茶」の産地だという。また政所から支流の御池川沿いにさらに山道を進んだ蛭谷と君ヶ畑は、全国の山中で活躍していた木地師の故郷で、蛭谷には木地師資料館もある。以前は永源寺町に属していたが、2006年3月に東近江市となった。

   
  君ヶ畑@(東近江市君ヶ畑町)2018.04.19     36×51p  
  春爛漫。若葉を満喫しようと「木地師の故郷」と言われる東近江市の君ヶ畑へ出かけた。以前、政所まで行ったときに行きそびれた場所で、覚悟はしていたが、狭くて曲がりくねった道をずいぶん長く走る必要があった。しかもカーナビに頼ったのが失敗で、高い峠を越えさせられた。トタンカバーは掛かっているものの、元草葺き屋根が軒を連ねるのが集落の特色なので、なるべく多くの元茅葺き屋根が画面に収まる場所を選んでまず1枚。近所の方と少し話をした。「家数は60軒ほどあるが、多くは空家」とのことで、深刻な過疎化が進んでいるようであった。  
 
 
   
  君ヶ畑A(東近江市君ヶ畑町)2018.04.19     F6  
  1枚目に描いたのと同じ家々を表側から。手前の家は空家になってからだいぶ時間が経っているようで痛々しい。2軒目には洗濯物が干してあるから人が住んでおられる。過疎化の激しい村ではよく見かける風景とはいえ、心が痛む。しかし、バス停をみると1日5便もバスが来る。うち1便(最終便)は予約があったときにだけ走るという。小型ワゴン車が使われており、市がタクシー会社に運行を委託している「ちょこっとバス」とか。過疎地らしい良い試みだと思った。  
 
 
   
  君ヶ畑B(東近江市君ヶ畑町)2018.04.19     F6  
  君ヶ畑での3枚目は木地師の祖といわれる惟喬(これたか)親王の住まいだった「高松御所金龍寺」から集落を見下ろして描いた。スケッチした場所に東近江市教育委員会が建てた説明板があった。それによると、平安時代前期、文徳(もんとく)天皇の第1皇子だった惟喬親王は皇位継承に破れてこの地に移り、自らロクロを考案して木の器づくりを始めたという。これが木地師の始まりとなり、木地師はその後全国の山々へ散らばっていった。その親王の御殿が金龍寺だそうで、すぐ近くには親王を祀る「大皇器地祖神社」もあった。  
 
 
   
  箕川@(東近江市箕川町)2018.04.19     36×51p  
  君ヶ畑から蛭谷へ移動した。しかしこの地にある「木地師資料館」は完全予約制のため見学はあきらめ、さらに下流の箕川(みのかわ)へ。スケッチポイントを探していると、道路沿いのお宅のご主人がいきなり「お茶を飲んでいけ」とおっしゃる。君ヶ畑でも同じように声を掛けられたし、以前、政所でも路上までお茶セットがでてきたことがある。さすが政所茶の産地らしくお茶文化が根付いていると感心し、せっかくだからお茶とお菓子をごちそうになった。町並みに関しては、君ヶ畑より箕川の方が絵になるなと思いながら描いた。感謝の意を込め、お茶をいただいたKさんの姿を描き込んでおいた。  
 
 
   
  箕川A(東近江市箕川町)2018.04.19     F6  
  箕川の集落を奥の方へ進むと、道が急坂になって御池川へ下った。川に架かる橋の上で振り返ると元茅葺き屋根の家が2段に連なっていて面白い。川の対岸にも家があるようだが、あまり人の気配がしない。川の音以外に何の音もしない中でスケッチしていると、ちょっと心寂しくなってきた。  
 
 
   
  政所B(東近江市政所町)2018.04.19     F6  
  この辺りの中心地である「政所」でもう1枚描いた。本来、政所を経て箕川や君ヶ畑へ入るはずだったが、カーナビが峠越えルートに導いたため、政所へは帰路に立ち寄ることとなった。2003年10月にもほぼ同じ場所で描いているが、以前の絵(↓のA)と比べてみると集落の中心部にあった鉄筋コンクリート造の建物がなくなり、背後にあるお寺がよく見えるようになっていた。こうした集落に不釣り合いなコンクリート造の建物ができるのはよくあることだが、逆に消えてしまうのは珍しい。以前あったのは何の建物だったのだろうか。この近くの県道沿いに旧政所小学校の立派な3階建ての建物が残っていた。130年の歴史のある小学校だったが、2009年3月に閉校になったという。過疎化の厳しい現実がある。  
 
 
政所@(永源寺町)2003・10・26        36×51cm
政所は「政所茶」の産地。絵を描いている場所にやって来られた人とお茶談義が盛り上がった。あとでわざわざ自宅から自慢の茶葉とポットに入ったお湯を持ってきてくださった。スケッチの合い間に路上で思わぬ贅沢をさせてもらった。

政所A(永源寺町)2003・10・26        F8
政所は小さな谷を挟んで東と西に集落が分かれている。午前中は東側から上の絵を、午後は西側から下の絵を描いた。紅葉の季節にはまだ少し早かったが、ちょっとだけ木々の紅葉を進めておいた。

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