「誰が何と言おうが俺は…」

 

 

 

12月も後半に入り明日から冬休みに入る。

さっき学校の終業式を終えたリトルバスターズ男子4人は僕の部屋に集まっていた。

鈴はと言うと、終業式パーティーとやらで小毬さんの部屋に行っている。

どうやら女子メンバー全員で集まっているらしい。

 

残された男子メンバーは恭介に話があると言われ招集されていた。

 

 

「さぁ皆、明日から冬休みに入るが各々準備はできているか?」

 

 

もの凄い真面目な顔で恭介が言う。

 

 

「冬休みに準備なんかする必要あるのか?」

 

 

真人が首を傾げている。

真人の言うとおり準備なんて必要あるのだろうか?

 

「否、ある」

 

真人の質問にも全く動じた様子を見せない恭介。

もはや冬休みに準備は必要あるらしい。

 

「で、なんの準備をするんだ」

 

あきれた様子で謙吾が投げかける。

 

「んなもん、クリスマスパーティーの準備に決まってんだろ?」

「いや、決まってはないと思うんだけど」

「あのなぁ理樹…決まってんだよ」

「いやいやいや、決まってな、」

「決まってるんだ」

「…」

 

どうやら決まってるらしい。

でも恭介のあの自信はどこから沸いてくるのだろう?

たぶん学校も休みで遊びたい放題なのが嬉しくて堪らないのだろう。

 

「でも恭介、就職活動は?」

「ん? あぁもう決まったぞ」

「えぇ!? そんなの聞いてないよ! いつ決まったのさ?」

「あぁ実はな今日の朝決まったんだ。…いや決めたんだ」

「今朝決まったの? そんなにやりたい仕事が見つかったの?」

「おう、実は小さい時からの夢なんだけどな」

「へぇ、で何になるの?」

「あぁ俺は…サンタクロースになる!!」

 

痛い、この人痛いよ。

 

「だって素晴らしいと思わないか? 世界中の子供たちに夢と希望を与えれるんだぞ?」

「いや素晴らしいと思うけどさ、それじゃあ生活できないでしょ? お金はどうするのさ?」

「子供たちの笑顔…それはプライスレス!」

「プライスレスじゃ意味ないでしょうがっ!」

 

あぁ馬鹿なのか、この人は。 はにかみ笑顔が憎いよ。

それ以前に世界中の幼女が危険に晒されるので国をあげて阻止しなきゃな。

 

「ちなみにな、恭介」

 

謙吾が口を開く。

 

「世界にはその国に認定された公認のサンタクロースがいるんだ」

「じゃあ、俺は日本公認のサンタになるってことだな!」

「いや、日本にもしっかりと公認のサンタクロースがいるぞ」

「何だって!?」

 

謙吾の言葉に恭介が考え込んでいる。

 

「それにしてもよくそんなこと知ってたね、謙吾」

「謙吾っちは変なトコロで物知りだからな」

「ふん、まぁテレビで見ただけだがな」

「え? お前テレビ見んのか?」

「テレビくらい見るさ、そんなに意外か?」

「うん、僕も意外だと思う」

「俺は巻物しか読まないイメージがあるぜ」

「お前ら俺を何だと思ってるんだ…?」

 

「そうだ!」

 

すっかり黙ってた恭介が急に声を上げる。

 

「どうしたの?」

「公認のサンタなんて関係あるか!俺は俺で世界中の子供たちに夢と希望を与えるんだ!!」

「どうやって?」

「基本的にはサンタと一緒だ。クリスマスの夜にプレゼントを配る!」

「でもそれって不法侵入だよね?」

「いやサンタだぞ? 問題ないだろう?」

「いやお前はサンタにはなれない、ロリだからな」

 

謙吾の鋭いツッコミ。

 

「サンタがロリでもいいじゃないか!!」

 

しかしツッコミは効かず。

変態は断固たる決意を持っていた。

 

「いや良くないよ! それはただの変態だからね!!」

「おい理樹、警察に電話するか?」

 

真人が携帯に手を伸ばしている。

 

「待って真人、もう少し説得してみる」

 

僕らのリーダーを犯罪者にするわけにはならない。

 

「ねぇ恭介、子供が好きなら保育士とか他にも色々あるじゃない?」

「いや、俺はサンタがいいんだ!」

「それじゃ恭介は捕まってもいいの!?」

「うるせぇ!!サンタは捕まんないんだ!!子供達が待ってんだぁ!!」

「そんなの本物のサンタクロースに任しておけばいいじゃない!」

「否、俺が自分で世界中の子供達の寝顔を見て回るんだ!!」

「もう恭介の変態ロリコン野郎!!」

「何とでも呼べよ!!俺はサンタクローリになる!!」

 「もうローリって言ってるからっ!!」

 

言い切ったよ、この人…。

サンタクローリって変態でしょ?

あぁ痛い。

 

「…真人、警察に電話」

「おし分かった」

「謙吾は女子メンバーに非難警告のメール出しといて」

「うむ、了解した」

 

恭介の顔が微妙に引きつっている。

僕は最後のチャンスを与えることにした。

 

「恭介…今ならまだ引き返せるよ?」

「…」

 

恭介は何も言わない。

 

「鈴とも喋れなくなるよ?」

「くっ…俺は俺であり続けるためにサンタになるんだ」

 

いやいやいや、もう変態そのものでしょ!

理性カムバッーーク!!

 

「恭介は僕らのリーダーでしょっ!?」

「俺は…俺はっ」

 

バタンッ

 

勢いよく部屋のドアが開けられる。

 

「バカ兄貴が捕まるって本当か!?」

 

そこには鈴がいた。

女子寮から全力で走ってきたのだろう。

汗を拭いながら肩で息をしている。

 

「くっ」

 

恭介が鈴から目をそらした。

 

「おい理樹、馬鹿兄貴はどうしたんだ?」

 

鈴が心配そうな顔で恭介を見ている。

 

「ほら恭介、鈴も心配してるでしょ?」

「くっ、だが俺はっ!」

 

ドンッ

 

恭介が机(ダンボール)を叩く。

その衝撃で机の上にあった筆箱やらと一緒にCDデッキのリモコンが落ちた。

 

ピッ

 

床に落ちたことでデッキに電源がはいる。

そして、あるCDが再生された。

 

 

 

おんなじところぐるぐる回って
疲れ切ってしまっても
どんな光さえささない場所から
手を伸ばし続けてたんだよ

 

 

「恭介の夢は素晴らしいことだと思うよ。子供達に夢を与えたいんだもんね?

 でもそれで恭介が捕まったら子供達の笑顔が見れないよ?子供達の笑顔が見たいんでしょ?

 本当に恭介が子供達に夢を与える仕事がしたいなら協力するよ?

 僕らは仲間でしょ? 仲間の夢は絶対に笑わない。」

 

 

恭介は俯き口を閉じている。

僕は恭介の顔から一滴の涙が落ちたのを見逃さなかった。

 

 

「さぁ恭介、クリスマスパーティーをしようか?」

「り、理樹…」

 

僕たちは抱き合う。

 

 

どんな彼方でも
見えない光でも
掴む 幾千の時を越えて
きみが笑うから みんなも笑うんだろう
そんな日がくるなんて思ってなかったのに

 

 

 

「なんか知らんがよかったのか?」

 

鈴が言う。

 

「あぁ良かったんだ」

 

謙吾が言う。

 

「心配かけたな」

 

恭介が言う。

 

「よし皆でクリスマスパーティーの計画を立てようか!」

 

僕が言う。

 

僕たちは仲間だ。

誰か道を踏み外そうと、元の道に引き戻してやれる。

一人じゃない、皆がいる。

僕たちはリトルバスターズだ。

 

 

 

 

 

ん?

 

 

あれ?

 

 

なんか忘れているような…?

 

 

「あぁ!!!」

「ん? どうしたんだ理樹?」

 

恭介に心配されるが、そんなことには構ってる暇はないんだ。

 部屋の隅にいる巨体のことを忘れていた。

 

「真人!!警察に電話しちゃった!?」

 

すっかり忘れてた。もし警察が来たら大事になってしまう。

他の皆もハッとして真人の方を向く。

 

「あ? だから変態がいるから早く来てくれよ!!」

 

幸いまだ電話をしているようだ。

今のうちに誤解を解かなければ!

 

「だぁから!! 時間なんてどうでもいいんだよ!! 俺は今来てほしいって言ってんだ!」

 

怒鳴っている真人の手から無理やり携帯を奪う。

 

「ちょ、理樹!何すんだよ!?」

「真人は黙ってて!!」

 

真人がビックリした顔をしたが、恭介の誤解を解く方が先だ。

僕はコホンと一つ咳をして喋り出す。

 

「すみません。さっきの彼が言っていたことは全部嘘で、なんと言うか馬鹿なんです彼。

 ホント馬鹿で、もう筋肉と朱肉の区別もつかないほどで…」

 

必死に誤解を解こうとしたが電話の先から聞こえてきたのは。

 

「ピッピッピッピッポーン 17時32分40秒をお伝えします ピッピッピッピ…」

 

僕はなぜか17時32分をお伝えされてしまった。

僕はそのまま電話を切った。

 

「理樹、どうだった? 誤解は解けたか?」

 

恭介が心配そうに聞いてくる。

 

「あ? なにが誤解だよ?」

 

真人はまだ分かってないらしい。

 

「え〜と、恭介は大丈夫だよ。警察は来ない」

 

はぁ、と安堵の声を漏らす。

 

「あと真人」

「あ? 何だよ?」

「警察の番号知ってる?」

「あぁ、そんなもん知ってるに決まってんだろ?」

 

周りの皆はそういう事かと呆れている。

 

「うん、そうだよね」

「おいおい理樹、俺はそこまで馬鹿じゃねぇぞ」

「だよね、警察の番号知らない人なんていないよねぇ」

「当たり前だろ? そんな奴はクズだぜ、一生自分の筋肉と遊んでればいいんだよ」

 

ははっと皆で笑いあった後、メンバー全員で食堂に集まってクリスマスパーティーの計画を立てることにした。

 

「じゃあなクズ」

 

鈴が部屋を出る。

 

「じゃあなクズ、筋肉と仲良くな」

 

続けて謙吾が。

 

「まさ…いやクズ、たまには遊びに来るぜ」

 

恭介も部屋を後にする。

 

「な、なぁ理樹よぉ、俺はなんでこんなに傷ついてるんだ?」

 

僕は真人を無視して部屋を出ようとする。

 

「ちょ、理樹待てよ!!」

 

僕にできることは一つしかない。

 

「まさ…ねぇクズ? 時報の番号知ってる?」

「あぁ知ってるに決まってんだろ?」

「じゃあ電話して、僕は馬鹿なので捕まえてください!!って言ってごらん」

「時報にそんなこと言って意味あんのか?」

「ごめん、これ以上話せないや」

 

僕は部屋をでた。

 

 

 

 

その日の夜。

学園には警察から電話があり、真人は教師から説教という早めのクリスマスプレゼントをもらった。

 

 

 

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