13. 足跡―96
![]()
駿介は手帳を閉じた。
堀田玉実の情報から辿ってきた“被害者遺族”の未亡人にはアリバイがあった。吹田が転落死した夜と山岸が自殺した日四国にある実家へ帰省していて、吹田の事故が起こった夜は道後温泉で泊まりがけの同窓会に出席している。ついでにいえば、同室には複数の同級生がいて夜中がやがやと露天風呂へとくり出している。やはり実行犯ではない。
彼女は強い目で駿介をみつめたまま言った。
――――自殺した夫のことはもう忘れました。これから先、私は私の人生を全うする、それだけです。いけませんか。
駿介は再び手帳を開いた。この事件を追うと決めてから新たに用意した手帳だ。ここには現在までに分かっていることがぎっしりと詰まっている。直接取材したこと以外にも駒場と哲が集めた資料を整理し気になったことは独自の見解も添えて書きだしてある。事件の全貌へと近づいている実感もある。なのにそこから先がない。遺族は犯罪に遭ったことを忘れたかのように、いや隠し通して普通に暮らし、犯行にも直接手を下していない。
手帳の間から写真を一枚引き抜いた。老人ばかり二〇名弱が写っている。老人会の行事中に撮られたものらしい。肩を並べて微笑む老夫婦に視線を合わせた。先に会いに行った未亡人と同様、大切な家族を星川たち仲間に奪われた遺族だ。写真は同じ町内会の老人が持っていた。
――――神田さん夫婦はほんとうに可哀想だった。思い出すと今でも涙が出てくるよ。
夫婦と懇意にしていたという老人が話してくれた。
神田夫妻は結婚とともに神奈川県のこの土地へ越してきて一男一女をもうけた。子供たちはどちらも結婚して独立し、ときどき孫を連れて実家へ遊びに来る……、神田夫妻と子供たちはありふれた、どこにでもある親子関係だったという。夫妻は共に公務員をしていて退職後の生活には困らなかった。ときどき海外旅行をするなどして悠々自適な暮らしをしていたらしい。そんなある日、突然夫婦の姿が見えなくなった。と同時に家には『売り家』の看板が立った。近所の人たちがぞろぞろと家から出てきて騒ぎ始めた。作業をしている人間に、いったいどういうことかと詰め寄るが彼らに詳しいことは分からない。一般論として、借金で家や家財道具を売ったのではないかと教えられた。町内会の世話焼きの何人かが不動産会社へ乗り込んだ。事情を聞くと今回の土地売買についてはどうやら神田夫妻の長男が作った借金が原因であると言うことが分かった。何に使ったのか、長男が有り金をはたいても返しきることができない額で、神田夫妻が自分たちの財産を処分して借金を返済したのだという。
「あんた記者さんだって言ったね」
事情を話し終えると老人は皺だらけの顔をぬっと近づけてきた。
「なんで神田さんのことを今頃調べてるんだ?」
聞かれるだろうと思っていたことだった。駿介は乾いた喉元に唾を飲み込み、口を開いた。
「ある事件を追っていまして神田さんに辿りつきました。もしかしたら神田さんも被害に遭われたのではないかと、もしそうならお力になれないかと思いました」
「ふうーん」
真意を確かめるように、老人は駿介を下から覗き込んで呟いた。
「死んだ人間のことも調べるのかい」
「ええ。調べます」
「それでどうなる」
「どうにもならないかもしれません。ただ真実が知りたいのです」
「誰のためにだ?」
究極の質問だった。
駿介は言い淀んだ。記者の仕事とは、真実を追求し正しく報道し人々に伝える。それ以下でも以上でもない。……そのはずだった。
「知りたいのです。事件のすべてを。私自身のために」
駿介は正直に答えた。
「もしも理不尽な目に遭い人生を狂わされた被害者がいるのなら、その人に代わって声をあげたい」
「そっとしておいてほしいと言われたら?」
「そのときは真実は私の胸の中に。墓場まで持って行きます」
意外な言葉が自分の唇から零れ、駿介は一瞬うろたえた。だがこの場しのぎの答えではないことも分かっていた。これまで、ジャーナリストとして知り得た情報はすべて白日の元に晒す。その信念で動いてきた。理屈ではなかった。それなのに今、自分が吐いた言葉に嘘はないと駿介は誓うことができた。
「気に入った」
駿介を値踏みしていた老人はぐい、と顎をあげた。
「わしは、
老人は名乗った。
「斎賀さん、ですね」
近辺を一軒ずつ回りながら表札を確認していたが、改めて自己紹介されるとぐんと距離が縮まるのも事実だった。
「まあ、上がりなさい」
軒下から居間へ通され、写真とともに神田夫婦との思い出を斎賀老人から聞くことになった。駿介はメモを取り聞き役に徹した。
- [↑]
13.足跡―97
「わしな、誰にも言っておらんことがあるんだ」
思い出話の後、煙草に火をつけながら斎賀老人は声を落とした。
「神田さんにも口止めされておったからな」
「よろしければ教えてください」
駿介は控えめに身を乗り出した。身体の中をドクドクと血が駆け出すのが分かった。斎賀老人の口からなにかとんでもない事実が聞けるのではとの期待があった。
「神田さんがいなくなって半年が経った頃だったな、わしの元に神田さんから電話が来た。わしら町内会の人間がどれほど神田さんの身を案じているか誰かに聞いたと言っておったわ」
「誰に、ですか?」
「さあ、知らん。わしも聞かんかった。とにかくみんなに心配してもらって心苦しいというようなことを恐縮して言っとったから、そんなことはどうでもいい、あんたは元気なのか、と尋ねた。神田さんも奥さんもなんとかやっとると。それを本人の口から聞けたからわしはようやく安心したんじゃ」
神田夫妻はどんなに聞いても自分たちの居場所を語らなかったらしい。
「だから言ったさ。わしには教えなくたって構わない。だが娘の淳子ちゃんにはどこどこに住んでいるのひと言は連絡を入れておきなさいよと。淳子ちゃんは今東京で暮らしとるが両親が心配でしょっちゅうここに来ては当てもなく探しとったからな」
「そうでしょうね」
兄が自殺し両親も行方が分からない。残った家族として娘なら心配して当然だ。
「神田さんと最後に話したときのことは今でも全部覚えておるよ。神田さんは、“この年になって地獄を見た”と言っていた。息子を救うためになにもかも売り払ったのに助けられなかった、はじめからやつらは息子を解放する気はなかったんだ、とも言っていたな。わしには意味がわからんかったが……。なあ、あんたには分かるのか? 神田さんはなにかの被害に遭った……。あんたさっき、そんなことを言ったね。どういうことだと思う?」
「神田さんは他になにか言っていましたか」
駿介は聞き直した。斎賀老人の質問を逸らすためではない。すべてを知ってからでしか答えられることがあるか判断がつかない。
「他にか……」
「ええ、なんでもいいんです。思い出してください」
斎賀老人はしばらく考え込み、語ると決めた自分を奮い立たせるように二度、大きく頷いてから口を開いた。
「神田さんは『これから長い旅に出る』と言った。『いずれ、自分たちの死の知らせが入るだろう』とも。縁起でもない。わしは怒ったさ。そしたら神田さんはこう続けた。『紙の上の生死などたいしたことじゃない』と」
目を細めて、斎賀老人は遠くを見た。
「神田さんには、後生だから淳子ちゃんには連絡を入れておくれよ、と頼んだ。だってそうだろう。両親ふたりとも行方が知れないなんて子供にとっちゃどれだけの不幸か。そこにきて『死』なんて言葉を口にされたら、そりゃあ心配になるだろう」
「ええ、仰る通りです」
「だが神田さんは娘に最後まで居場所を教えなかったようだよ。神田さんの死の知らせが入ってしばらくしてから淳子ちゃんが「お世話になりました」ってこの辺を一軒一軒回って挨拶してなあ。うちにも来てくれて、こんなことを言っとった。『もう探さないことにしました』と。『いつか連絡をくれるまで待ちます』ってな。それだけでわしたちは通じ合った。神田さんは死んじゃいない。淳子ちゃんもそのことを知っている」
斎賀老人は一息つき、言葉を繋いだ。
「あれからずいぶん経ったが、神田さんのことは今もときどき思い出す。死んだ人間を悼むというよりは、今頃どうしているかと懐かしがる気持ちでだ。神田さんは今もどこかで生きていて、淳子ちゃんにも連絡を取って、心配するなと伝えているんじゃないかと。なんのためにそんなことをしたのか、わしなりに想像すれば……、そうだな、息子の作った借金は全額返済できていない、そのために夫婦で死んだことにした。そうしないと命を取られる。――どうだ? わしの推理は当たっとるか?」
駿介は薄く笑った。……もし、そのとおりだったらどんなにいいかと思う。復讐などに加担せず、どこかで平穏に日々を過ごしていてくれていれば。
「それとも神田さんたちはなにかに巻き込まれているのか?」
駿介の表情を目で追っていた斎賀老人が用心深く訊ねてきた。駿介は努めて笑みを作った。
「いえ、神田さん夫妻は今ようやく怯えや怒りや……、“見てしまった地獄”を乗り越えて暮らしているんじゃないかと思います」
「ほう」
斎賀老人が目を細めた。
「神田さんたちが生きていると、おまえさんも信じるんだな」
「ええ。きっとどこかで生きています」
確証はない。だが死んでいるはずがない、復讐を決めたのなら。そう思えるのだった。
「ありがとう。それを聞いてわしは安心じゃ」
斎賀老人がすっと、頭を垂れた。
- [↑]
13. 足跡―98
![]()
神谷豊の葬儀から十日が経ち、ようやく哲の元に神谷家からの返事がきた。駿介と報告をし合った後で、一度神谷の実家へ催促の電話を掛けたが電話口に出た身内と名乗る男性から“親戚からその旨は聞いているが今はそれどころではない”というようなややヒステリックな言葉とともに電話を切られてしまった。時期尚早だったとあきらめ少し様子をみることにした。その間には当然詩織の行方捜しをしたが、こちらはまるで進展がなかった。
神谷の妹から哲の携帯に連絡が入ったのは、駒場と共に近くの定食屋で昼飯を摂っていたときだった。哲はそそくさと席を立ち、訝しげに自分を見ているボスの視線を遮るように背中を向けたまま外に出た。妹は、直接会って話をしたい、と言ってきた。願ってもない。哲は即答で、どこへでも伺います、と答えた。
午後七時。神谷の妹が指定してきた店は、奇しくも神谷と話したファミリーレストランだった。駅周辺に店がないわけでもないのだが、兄妹揃って駅からやや離れた場所を指定してくるとは偶然にしては奇妙な一致だと思った。が、その理由は神谷の妹からの言い訳のような説明で明らかになった。
店に入るとすでに神谷の妹が待っていた。ウエイトレスに案内されるままに席についたのか、四方に席がある真ん中の席だった。ウエイトレスに待ち合わせだと告げると、「佐々木様ですか?」と問われた。そうだと答えると席へと案内された。
「はじめまして、佐々木です。このたびはお忙しい中無理を聞いていただきありがとうございます」
初対面となる神谷の妹に名刺を渡し会釈した。妹もつられるように名刺を出した。受け取り眺める。太字で都内のエステティックサロン名があり、その下にエステシャン・神谷芽衣子と書かれてあった。
「すみません、こんなところまで。駅の近くですと、知り合いに会うこともありますので……」
開口一番、芽衣子は恐縮気味に呟いた。駅前のパン屋で母親がパートをしており、店の従業員や周辺の商店に顔見知りが多く、なにかと詮索されるのだと言う。
「知らない人と会っていると母が疑心暗鬼……、と言いますか、心配しますので。母はその……少し神経が細いので」
「そうでしたか」
相槌を打ちながら、そうなった発端は夫の浮気なのだろうと察しを付けた。いつだったか駒場が『修羅場のあとで強くなる人間と、その逆になる人間がいる』と言っていたことを思い出した。あれはなんの仕事の後だったか……。いや、違う。哲が駒場探偵事務所で働くことになってほどなく、最初の依頼を消化した後のことだ。駒場は数年前に舞い込んだ仕事の話しを二軒目の酒場で語り出し、哲は哲で、酔っ払って呂律の回らない口調で、「へえ、ナギさんにも失敗とかあるんすかあ。でも気にすることないっすよお」とへらへらと元気づけた記憶があった。
「今日、お呼びしたのは実は……」
「はい」
芽衣子の声に哲は気持ちを引き締め、過去から現在へと意識を戻した。
「兄があなたに悩みを打ち明けていた、ということを叔父から聞きまして、いったいどういうことを兄が悩み、あなたに相談していたのか私、どうしても知りたくて」
「ちょ、っとお待ちください、ね」
やってきたウエイトレスにコーヒーを注文しつつ、哲は手帳を開いた。時間稼ぎだった。自分の知りたいことにばかり気を取られ、妹からの質問を想定していなかったのだ。考えてみれば芽衣子の要求は当然のことだ。迂闊だった。……さて、どう誤魔化そうか。頭をフル回転させながら尤もらしい理由を探す。
「相談というと大袈裟なんですが、お父さんのことやなんかを……」
口に出しながら、これが一番無難だろうと計算する。神谷の自殺の理由もそれだし、神谷の告白を回想しても間違ってはいない。
「あの、佐々木さんが兄と最後に会ったのはいつでしょう」
「えっと」
忙しく手帳を捲りながら哲は言葉を探した。父親の二度目となる不倫が家族に発覚したのはいつか、それを自分は知らなかった。間違った答えを言えば不信感を与えることになる。
「お兄さんはあなた方のことをとても大切に想っていましたよ」
哲は咄嗟に誤魔化した。が、妹はぐしゃっと表情を崩した。
「ご家族の平穏だけを願っていました」
哲は両手を組んで絞り出すような声で告げた。妹の目から涙が溢れだした。
- [↑]
13. 足跡―99
「だからご自分を責めることはどうかしないでください」
神谷の妹は項垂れて何度も頷いた。
「お兄さんの葬儀にお友達は来られましたか? 今回のことで、私以外にも相談されていたような方はいらっしゃったんでしょうか」
質問を逸らせたことに安堵しながら静かに言葉を重ねた。
「きっと私よりもお友達にはもっと深いことを話されていたんだと思いますが、どういった方が葬儀には?」
「お兄ちゃんの友達は会社の人たちも含めてたくさん来てくれました」
「そうでしょうね」
「でもみなさん、兄が自殺をするまで追いつめられていたことを知らなかったって。申し訳なかったって、謝ってくれて……」
「ええ、近くにいたら、自殺を思いとどまらせることができたかもしれないと悔みますから」
「はい。そんな感じのことをみなさん口々に……」
両手の薬指で目頭を押さえ、妹は深く息をついた。
「兄は誰にも相談しなかったみたいなんです」
「失礼ですが、恋人は?」
妹は左右に首を振った。
「お兄ちゃんは女嫌いなんです」
「え?」
「嫌い、っていうのは違うのかもしれないけど、彼女とかそういう人を作ったことはないんです。昔からです」
「昔といいますと」
「私が気づいたときにはそうでした。親戚の人がお母さんに、お父さんが浮気なんかしたからそうなっちゃったんだろうって、お兄ちゃんに聞こえないところで言ってたことがあります」
哲は、ああ、と腑に落ちた。
例のビデオを見てからの神谷が、どんな人生を送ったのか垣間見れた気がした。抱えた罪悪感はこちらの想像をはるかに超えたのかもしれない。
「ただ……」
妹が考え込むように顎に拳をあてがった。
「ただ?」
話しが続きやすいように哲も聞き返した。
「お兄ちゃんが死んで、女の人がひとりだけ尋ねてきて」
哲は身を乗り出した。香典を持ってやってきたという女のことだと直感した。
「同級生だって言ってたけど、私は顔も名前も覚えがありませんでした。お兄ちゃんの口から話題に出たこともない人だと思います。あの、私がお兄ちゃんの友達や会社の人に連絡したんです」
「ええ」
「そんなに数多くじゃないです。お兄ちゃんはあんまり友達を作りたがらなかったから、高校の頃の友達ばかりです」
すべてがあのときから変わったのだろう。新しい友人を作ることを怖がり、結果して三鷹と関わる前に築いた人間関係を維持してきた、ということか。
「その女の人はお兄ちゃんの携帯にも登録されてなかった。もちろん着信記録もなかったし、メールのやりとりもしてません……。佐々木さんがその人のことを知りたがってるって知って、私もなんだか気になって、それでちょっと調べました」
「そうでしたか」
「だけどお兄ちゃんとは本当に単なる同級生だったみたいです。大学も違うし、勤め先も違うし、お兄ちゃんの友達にも聞いたけど、全然接点なかったってみんな言うし」
「その方のお名前をお聞きしてもよろしいですか?」
「あ、はい。、
「ご住所分かりますか?」
妹はバッグから香典袋を取り出して裏返した。女性らしい丸い文字で名前と住所と金額が書かれてあった。哲はそれらを手帳に書き写し妹へ返した。
- [↑]
13.足跡―100
神谷の妹には、なにか分かったらすぐに連絡すると伝え丁重に礼を告げて別れた。その足で小磯明菜の自宅を尋ねた。夜九時を過ぎていたこともあり会えないことは覚悟で向かった。
彼女の家は神谷の住んでいた町からタクシーで西に四十分ほどの住宅街にあった。表札を確かめ、父親らしい家長の名前を手帳に書き留めた。電話番号を後で調べ明日改めて連絡を取ることにする。ついでに周辺の風景をカメラに収めた。
帰りは電車に乗った。経費の出ない交通費に金は掛けられない。都心行きの空いている電車に揺られながら、ふいに星川から借りた卒業アルバムのことを思い出した。あれは今どこにあるのだろう。返した記憶はない。ということはまだ駒場が持っているはずだ。まさか捨てはしないだろう。ゴミとして出した袋の中には入ってなかった。おもいきって駒場に聞いてみようか。ポケットの携帯電話を服の上からなぞった。当然駒場からは、終わった仕事のことがなぜ気になるのかと詰問されるだろう。そうしたらなんと答えよう。神谷が死んだことは駒場に話していない。今更彼の話題を持ち出して見せてほしいとは言えない。「アルバムの中に可愛い子がいたんで」というのはどうだろう。いや白々しいか。「探し物がみつからないから、念のためアルバムの中を確認したい」というのは? 知らずに挟みこんでしまったかもしれないから、と言えば案外あっさり渡してくれるかもしれない。……それはないか。
あれこれ考えてはみたものの巧い言い訳は思いつかなかった。
乗り換えをふたつして帰路に着いた。部屋のドアを開ける頃には哲の中でひとつの結論が出ていた。駒場に内緒で星川のアルバムを探す。駒場が外出したとき、あるいは駿介に協力を頼み駒場を呼び出してもらい、とにかく、駒場に知られずにアルバムを見る。なに、返す当てがなくなった人間(星川)のアルバムを少し覗くだけのことだ。小磯明菜がどのクラスにいて、誰と関わりが深かったのか、あわよくば知り得た情報とリンクしている箇所があるかのを確認できたらいい。
携帯を取り出し、哲は駿介への短縮番号を押した。
→→→つづきを読む?