60系トヨタパトロール・型式調査報告






警察仕様車と市販車の差の把握へ


初期クラウンのパトカーが、実は「トヨタ・パトロール」という、市販車のクラウンとは別のクルマである、ということはこれまでにも何度がふれて来ました。

いままで日本のパトカーやタクシーのミニカーというのは、既に乗用車モデルとして開発コストの償却の済んだ金型を転用して、塗装色を変えたバリエーション製品が大半でした。「大半」というよりは、少なくとも国産ダイキャスト製品で、「パトカー専用金型」というものが起された例を私は知りません。トミカなどで、パトカーの方がノーマル・セダンよりも先に発売になったり、事故処理車などでかなり大幅な改修を受けた例はあったかと思いますが。(アオシマのコールドキャスト製「西部警察」シリーズの330・430セドはパトカー専用キャスティングと言っていいのかもしれません。)

実車上で警察仕様車と市販セダンとの外観上の差がほとんど無い場合には、例えば「警察エンブレム」ではなくてクラウンの「王冠エンブレム」が付いている、といったことまでいちいち問題にする気は私にもありません。

しかし、さまざまなメーカーの作ったパトカーモデルの中には、微細なエンブレムの彫刻の改修などをコスト上の理由で省略しつつも、できるだけ実車の警察仕様に忠実であろうとしたモデルもあれば、全く架空のパトカーモデルもあるわけです。また、「実車に忠実」であるような体裁をとりながら、実はあまり考証されていない、というような例も散見されるようです。

ですからここから先は、メーカーの問題というよりは、コレクター、つまりモデル購入者側の問題になると思うのです。忠実なスケールモデル性を持ったものか、架空の(でもそれなりに楽しい)モデルかを知った上で購入しているのと、逆に架空のモデルも実車の警察仕様を再現していると思って買っているのとでは、長年の間には違いが出て来るのではないか、と私は思います。

ということで、ミニカーメーカーを批判するためにではなく、これからコレクターの側での眼力を高めていく上での視点のひとつとして、「警察仕様車と市販車は何がどの程度違うのか」という点を少し考えてみたいと思います。

60系では「トヨタ・パトロールカー」に
「トヨタ・パトロール」について現在手元で確認できる限りでは、

◆初代RSに対応するのは「トヨタ・パトロールBH26」「FH26」
  初代RS20系に対応するのは「トヨタ・パトロールFS20」
◆2代40系に対応するのは「トヨタ・パトロールFS40」
◆3代50系に対応するのは「トヨタ・パトロールFS50」「MS55E」

ということになります。
特に「トヨタ・パトロールBH26」「FH26」は、市販RSとはエンジン/シャシ/架装ボディともかなり異なり、同じクルマとは言えません。
クラウンの「RS」は「R型」系列エンジン搭載車、「MS」は「M型」系列エンジン搭載車ですから、「BH」は「B型」系列エンジン搭載車、「FH」「FS」は「F型」系列エンジン搭載車ということになります。記号2文字目の「H」「S」は車台形式を示し、「S」記号を持っているものが基本的にクラウン系列のシャシを持つようです。

「B型」というのは、水冷直列6気筒3386ccのガソリンエンジンで、トヨタが1951年に警察予備隊(現在の自衛隊)から数社への要請を受けて開発した「トヨタジープBJ」に搭載されていたエンジンです。1954年の「ランドクルーザー・20系」に継承されました。同様に「F型」は、直列6気筒・3878cc/110psのガソリンエンジンで、「B型」に代わってランドクルーザーのエンジンとなっていったものです。時期的には完全にRSクラウンと重なります。市販RSの「R型」エンジンは、1.5リッター・直4・OHVで48ps(発表当時)〜62ps(最終モデル)なので、「F型」110psに対していかに力の差があるかがわかります。

「トヨタ・パトロール」という、クラウンとは別の車種が存在した理由は、言うまでもなく、市販車のクラウンでは警察業務の遂行に性能的に不十分で、エンジン/ミッションなどに特別仕様が要求されていたからでした。
40系までは、市販クラウンとは全く異なる上記「F型」系列のエンジンを警察仕様には積んでおり、これを「トヨタ・パトロール」と称していたこと、50系になって市販車と同じ「M型」系列エンジン車が付加されたことがうかがえます。

つまり市販車としてのクラウンの性能が向上するにつれて、市販車とパトロールカーとの動力性能面での差は次第に小さくなって行き、60系では「トヨタ・パトロール」ではなく「トヨタ・パトロールカー」という表現になり、やがて「クラウン・パトロールカー」となっていくのです。

今回は、「トヨタ・パトロールカー」と、市販仕様のクラウンとは、何がどの程度まで違っているのか、という点について、60系「トヨタ・パトロールカー」の「新型車解説書」(1972年3月・トヨタ自動車販売株式会社発行)を資料に、この点の一端をご報告したいと思います。

※この「新型車解説書」は、セカンドハンド市場で入手したもので、私が業務上知り得る情報を転用・掲載しているものではありませんので、念のため申し添えます。

※項目見出し左の「カーアイコン」は、「今淵モータープール」のサイトを運営される  
 「inomamo」さんの制作によるものです。特に60系・50系・40系・RSパトカーなどを新たに
 作っていただきました。ありがとうございます。

60系トヨタ・パトロールカーの型式区分
60系「トヨタ・パトロールカー 新型車解説書」では、警察仕様の車種を、
以下の7つに分類しています。

◆制服パトロールカー(露出式レッドピーコンランプ・白黒)
◆特殊パトロールカー(隠し式レッドピーコンランプ・黒のみ)
◆警護車(着脱式レッドビーコンランプ・黒のみ)
◆私服無線車(レッドビーコンランプなし・グレー/グリーン/白)
◆事故処理車(バン/露出式レッドビーコンランプ・白黒または警察グレー)
◆鑑識車(バン/露出式レッドビーコンランプ・警察グレーまたはグリーン)
◆捜査用車(バン/レッドビーコンランプなし・グリーン/ブルー)
◆保全車・捜査用車(バン/レッドビーコンランプなし・警察グレー/ブルー)

面白いのは、「レッドビーコンランプ」の装備方法の違いが、車種分類上の大きな要因になっていることです。

 
各車種に対応する対応型式は以下となります。

◆制服パトロールカー(MS65Z-K/MS65Z-KC/RS60Z-Y/RS60Z-YC)
◆特殊パトロールカー(RS60Z-YE/MS65Z-KE)
◆警護車(RS60Z-YK/MS65Z-KK)
◆私服無線車(RS60Z-YJ)
◆事故処理車(RS66VZ-Y/RS66VZ-YC)
◆鑑識車(RS66VZ-YEC/RS66VZ-YE)
◆捜査用車(RS66VZ-YJ)
◆保全車(RS66VZ-YK)

「Z」は「警察仕様車」を表す記号、「K」は「フロアシフト車」、「Y」は「コラムシフト車」を表します。
「制服パトロールカー」というのはいわゆる「白黒パトカー」のことで、警察車両であることが常時暴露されている、という意味でこの呼称を使っているようです。
「特殊パトロールカー」というのが「覆面パトカー」です。
下の画像は、左が警護車(着脱式レッドビーコン)、右が私服無線車(レッドビーコンなし)です。

一見複雑でも 基本シャシは3種類
型式は細分化されていますが、基本シャシは3種類です。

◆MS60-Bシャシを持つ、MS65系・4ドアセダン(直6気筒・4M型エンジン・2563CC・130ps/
 5200rpm)4速フロアシフト
◆RS60シャシを持つ、RS60系・4ドアセダン(直4気筒OHV・5R型エンジン・98ps/5200rpm)
 3速コラムシフト
◆RS66Vシャシを持つRS66V系・5ドア・バン(直4気筒・5R型エンジン・98ps/5200rpm)
 3速コラムシフト

したがって、制服パトロールカー/特殊パトロールカー/警護車について、4M型エンジン車と5R型エンジン車の双方を設定。私服無線車/事故処理車/鑑識車/保全車については5R型エンジン車のみ、ということになります。

60系クラウン(くじら前期型)のエンジンは、
◆4M型(直6・SOHC・2563cc・130ps/5200rpm)
◆M-B型(直6・SOHC・1988cc・125ps/5800rpm)
◆M-C型(直6・SOHC・1988cc・105ps/5400rpm)
◆M-D型(直6・SOHC・1988cc・115ps/5800rpm)
◆5R型(直4・OHV・2000cc・98ps/5200rpm)

という5つの設定になっています。60系市販車は1971年2月の発表ですが、このうち「4M型」エンジン車は、1972年5月に2.6リッター用として追加されたものです。

「M-B型」は、40系クラウンS(MS41-S)で搭載されたエンジン。
「M-D型」は、50系ハードトップ(MS51)の発表の際に追加されたエンジン(この時点では110ps)。「5R型」は、MS50系で新設されたエンジンで、従来のR系「3R型」OHVのストロークを4mm伸ばし、2000ccに排気量アップするとともに、燃焼室と給・排気マニホールドを改良したもの。1970年(昭和45年)10月以降はさらに「新型5R」になっているようです。

制服PC・「MS65Z」系と「RS60Z」系には外見上の差異なし


◆警察仕様車である「RS60Z」(5R型エンジン車)は、市販車の「RS60-Y」がベース
◆同じく警察仕様車「MS65Z」(4M型エンジン車)は、駆動系については市販車の「MS65-  K」、その他装備については「MS60-KB」をベースとしている、ということのようです。  
 「RS66VZ」はバンです。

つまり、制服PC/特殊PC/警護車について、ハイパフォーマンス仕様の「直6・4M型エンジン・4速フロアシフト」車の設定が追加されていて、あとは「直4・5R型エンジン・3速コラムシフト」車の設定のみ、ということになります。

制服PC/特殊PCの「直6・4M型」設定は言うまでもなく「交機・高速隊」的な運用、「直4・5R型」設定は「自動車警邏隊」的な運用(経済性重視)を想定していることは容易に推察できます。制服PCに限らず、「4M型」搭載車と、「5R型」搭載車との外見的な識別はできないのではないか、と考えています。外見上の差がもしあるなら、性能差を見分けられてしまうことになりますから。面白いのは「警護車」に両方の設定があることです。用途や配属先によって性能差を設けているのでしょうか。
 
画像のミニカーは、左がダイヤペットNo.312(00189/P-6)「ニュー・クラウン・パトカー」・1972年6月発売、右が川端企画J-43・No.14・「'71クラウン・警視庁」です。ダイヤペットは屋根上にモーターサイレンとラウドスピーカーを付けていますが、「MS65Z」「RS60Z」ともにモーターサイレンはエンジンルーム内のバッテリーと対照の位置に内蔵装備されているので、車外に露出装備されることはありません。J-43で右フェンダー上に装備されているのはラウドスピーカー形状をしているので、これはあり得ます。
ダイヤペットやトミカの商品名である「ニュー・クラウン・パトカー」は、50系クラウンに対して「ニュー」という意味なのですが、現時点でリスト上で見ると、どのクラウンか全くわからなくなるので閉口します。

制服PC・「MS65Z」系と「RS60Z」系は「CROWN」欧文ロゴタイプを装着


各用途・車種で細分化されている各形式は、上記のエンジン/トランスミッションの違いが大きな柱で、後は用途的な装備・補機類の違いで構成されているようです。この場合の「補機」とは、エンジン関係補機だけでなく、レッドビーコンランプ/モーターサイレンなども含まれます。

トヨタのこの資料では「赤色灯」「警光灯」なとどいわず、メーカー側呼称として「レッドビーコンランプ」と言っているのが面白いところです。「無線機は警察庁にて装備」となっており、トヨタ側の工場出荷・納車時には、マイクロフォン/トランシーバー(いわゆる受話器)ともども未装備となっています。その他では、無線機の雑音防止のために、エンジン/シャシ/ボディー各部にボディアース線(ボンドストラップ)が装着されます。

「新型車解説書」のタイトルは『トヨタ パトロールカー』になっていて、「クラウン パトロールカー」ではないのですが、制服PCを含めて各車には「CROWN」の欧文ロゴタイプが装着されています。解説書中の写真の車体がナンバープレート位置に「CROWN」のプレートを付けていることと合わせて、「トヨタ パトロールカー」が「クラウン パトロールカー」になる過渡期であることをうかがわせます。

ただし、制服PCのラジエータグリル前面にはクラウンの「王冠」のエンブレムではなく、「警察エンブレム」が付きます。ミニカーでこれをちゃんと彫刻で再現しているモデルはありません。逆にミニカーで後席ファストバック部に付けられている丸いエンブレムは、「スーパーサルーン」(2000および2600)のもののようで、当然ながら警察仕様車には覆面車を含めて付きません。

「特殊PC」「警護車」「私服無線車」は市販車と外見上の差異なし


「特殊PC」「警護車」「私服無線車」の違いですが、「レッドビーコンランプ」が「隠し式」で格納できるものが「特殊PC」、着脱式のものを「警護車」、レッドビーコンを持たないものを「私服無線車」としているようです。
いかに格納式であっても、ルーフに切り欠きがあったら警察車両であることを暴露してしまうので、捜査には使えない、ということなのでしょう。

制服PCでラジエータグリル前面に付けられていた「警察エンブレム」は、「特殊PC」「警護車」「私服無線車」では付けられず、クラウン市販車と同じ「王冠エンブレム」(昭和46年〜49年タイプ)が付きます。「警察エンブレム」が付いていれば覆面性がなくなってしまいますので、当然と言えば当然です。したがって、「特殊PC」「警護車」「私服無線車」では市販クラウンと外見上の差異は無いことになります。

ミニカーはこれもダイヤペットNo.263(01164)「トヨタ・クラウン・スーパーサルーン」と、J-43・No.14「'71クラウン・スーパーサルーン」。塗色が黒というだけで通常の市販クラウンのモデルですが、この仕様で「特殊PC」「警護車」のモデルとしての要件を満たしていることになります。黒塗りモデルにレッドビーコンランプを移植したくなります。ダイヤペットでカッコ内は、後に品番システムが変更された後のナンバーです。つまり製品数が多くなり、3桁品番で在庫管理ができきれなくなったことによります。内容的に全く同じ製品に違う品番が与えられているものがあります。

くじらPCは各メーカーとも製品化している人気モデル


ダンディ・D7-1およびトミカ4-2(1972年10月発売)の制服PC。ダンディも右フェンダー上にラウドスピーカーを付けます。黒シートと赤シートがあり、黒シートの方が初期生産分のようです。下段右の黒塗りは32-1のノーマルセダンで、「トミカ誕生記念コレクション」中のもの。あとは、「マルカ」製のトミカサイズのくじらパトカーを未入手です。

1973年マイナーチェンジ後の「くじら後期」


こちらは1973年2月にマイナーチェンジを受けた後の、いわゆる「くじら後期」。不評の原因のひとつと考えられた「カラードバンパー」をやめたため、ボディ上にバンパーが露出する形になりました。

残念ながら手元にあるのは、「くじら前期」の解説書のため、「後期」警察仕様の型式は把握できていません。後期型市販車は1974年1月に、電子制御燃料噴射システムの「M-E型」エンジン搭載車を追加。しかし結局1974年10月には、後継の80系クラウン(第5代)にフルチェンジしてしまいます。警察仕様車が供給されるのは、市販車がフルチェンジ〜マイナーチェンジしてから、時期的に少し後にならざるを得ないようなので、果たして各ブランドが熱心にモデル化している「くじら後期」のパトカーは実在するのでしょうか。

(60系市販車の発表が1971年2月であるのに対して、60系警察仕様車の新型車解説書は1972年3月付けです。「これによってFS50系、MS55E系警察仕様車は廃止になる」とあり、このことは逆に市販車のフルチェンジ後も、警察仕様としては旧モデルの生産が続いていることをうかがわせます。ミニカーのメーカーは、この点は全く考慮していないでしょう。1972年3月が舞台である「あさま山荘」の映画で、長野県警が50系制服PC(劇中再現車)を使用しているのは全く正しいことになります。)

ダイヤペット/J-43とも、「後期」型の制服PCをモデル化しています。
ダイヤペットの品番はNo.312(00189/P-6)「ニュー・クラウン・パトカー」のままで、「前期モデル」「後期モデル」として区別されています。ダイキャスト製のホイルも変更されています。

最新の「トミカくじX」は「くじら後期」


「トミカくじ」のシリーズでは、これまで消防車はあったものの、不思議とパトカー・モデルは作られていませんでしたが、2004年3月発売の第Xシリーズで、制服PC・2点、覆面PC・2点が作られました。この他にも「警護車」「私服無線車」ふうのクラウン/セドリックがたくさん含まれています。このページのアップ前日に入手しました。

「くじら」では警視庁制服PCと、黒塗装の「特殊PC」「警護車」ふうモデルが作られましたが、前後バンパーをボディ側に回りこんでシルバー・ペイントすることで、「後期くじら」を再現しています。これまでのバリエーションは「前期くじら」だったので、なかなかイキなはからいと言えるでしょう。リアエンドも、これまではメッキプラでしたが、今回はテールランプ再現のクリア・レッド・プラになっています。黒のシートなどとも合わせて、なかなか良心的なパトカーモデルです。

初期トミカのパトカーがシール添付だったことの影響からか、ボンネット前端のいわゆる「ヒゲ」塗装の中心に警察エンブレムをタンポ印刷するのが、最近のトミカの慣例になっているようですが、言うまでもなく実車では警察エンブレムは「ヒゲ」の中にではなくて、ラジエータグリルの中心に付きます。

70系ハードトップのパトカーは実在せず


モデルペットNo.41(1972年4月発売)、ダイヤペット・チェリカ80シリーズ・C-4(0404・1972年11月発売)では、ハードトップ(MS70)のパトカーが作られました。これは、モデルペット/チェリカともに60系クラウンの製品化にあたって2ドア・ハードトップを選んだために、4ドア・セダンの金型が無かった、というだけの理由に拠っています。70系ハードトップのパトカーは実在しないはずです。
モデルペット/ダイヤペット/トミカの3ブランドが並存していた短い期間に作られたモデルたちです。モデルペットで新製品が出るのは1973年12月までとなります。

私服無線車を除いて、セパレートシート


このページをアップ後に、「シート」についてのご質問をいただきました。
制服PC・覆面PC・警護車のフロントシートは全てセパレート、私服無線車のみ、「RS60系標準車と同じベンチシート」、となっています。バン(ワゴン)系は全てベンチシートです。
やはりこれは、乗員の安全性を配慮してのことかと推測します。それと、4M型エンジン搭載・MS60-BシャシのMS65系は4速フロアシフトですから、ベンチシートは設置できないことになります。大きな流れで言うと、シートのセパレート化は安全対策とともに、コラムシフトがフロアシフト化されていくプロセスと関係してくるでしょう。

ミニカーではJ-43は左右つながった形状をしていますが、型ヌキの関係でこういう形状になっているだけで、ベンチシートを再現しようとしたものではないかもしれません。

60系では、色は黒レザー、シートに限らずインテリアはほぼ黒基調のビニール系、私服無線車のベンチシート車について、黒とグレーの両方の設定があります。
ビニール系素材が使われる理由は、被疑者・被害者・泥酔者などを後席に収容した場合に、万一汚れても直ちに洗浄できるからです。

面白いことに、フロントシートは座る面が「標準車よりも10mm下げてある」となっています。ヘルメットや帯皮(おびかわ)などの装備を着けた状態で、迅速に乗り降りしやすいことを考慮した措置と思われます。(帯皮というのは、ベルトに拳銃ホルスター/手錠ケース/受令機ケース/警棒などを装着した状態のものです。)
某メーカー製・某車を高速隊で採用するかどうか試験したところ、あまりにも車高が低く、ヘルメット着用の状態で乗り降りしにくいために不採用になった、という話も聞きました。

セパレートシートの間には警棒2本を固定する装備があります。当時の警棒は長いものだったので、こうした装備が必要だったのでしょう。平成6年(1994年)4月1日に警察官(及び交通巡視員)の制服が改定された際に、警棒は伸縮式のものになりましたので、現在は左右ドアのポケットに装備するようです。伸縮式警棒より長いものを「警杖」と言い、これはトランク内に収容されているようです。

前回書き忘れましたが、バッテリは、「標準車と同じ搭載位置に50A.Hを搭載」「しかし保全車はRS66V系標準車と同じ35A.H」となっています。パトカーは、モーターサイレン/レッドビーコン/無線機を搭載するため、バッテリの負担が大きいのです。特に停車中でもレッドビーコンを点灯し、無線機を使用しなければならない場合があります。三億円事件の現場で、レッドビーコンと無線機の電源を確保するために、エンジンを吹かし続け、オーバーヒート防止にボンネットを開けている410ブルーバードPCの写真が残っています。

バン型事故処理車入手(2004.6.18追加)


ダイヤペット0903番の、クラウンバン事故処理車。このページを作った時から存在は知っていたものの、入手にしくじっていたのです。

商品名は「クラウンバン・パトロールカー」ですが、明らかに「RS66VZ-Y」「RS66VZ-YC」の事故処理車をモデル化したものです。
ダイヤペットお得意の架空のバリエーションモデルと思いきや、実在の警察仕様車をほぼ正確にモデル化していることになります。
実車では、白/黒の塗り分け仕切り線が、ボディ後部でわずかに上がっていますが、ダイヤペットはこれを表現し切れていない以外は(マスキングが大変!!)、なかなか良く実車のプロポーションを再現していることがわかります。

画像は2台とも、0900番台の品番を与えられた「ライト点滅」シリーズのもので、金型は250番の「クラウンバン」です。画像のモデル以外にも、どうやらライト点滅なしの「クラウンバン・パトロールカー」(01372番)が存在するようです。

協力工場はコード「011」。ダイヤペットの60系クラウンは、4ドア/2ドアハードトップ(1/40・1/30・チェリカ)/バンをモデル化していることに驚かされます。「くじら」はダイヤペットの企画をしていた川端さんの好みだったのかもしれません。それは、独立後のJ-43(川端企画)が「くじら」をバリエーションを含めてたくさん作っていることにもうかがわれます。そもそも「バン」を企画する、ということ自体がフツーではありません。クラウンバンにはこの「パトカー」の他、救急車・郵便車、「東京ガス」まであります。

バン警察仕様にも多くの型式が存在


RS66VZ系バン警察仕様は、事故処理車(RS66VZ-Y・RS66VZ-YC)、鑑識車(RS66VZ-YEC・RS66VZ-YE)、捜査用車(RS66VZ-YJ)、保全車(RS66VZ-YK)とも、補機装備の違いを除いて、駆動系統は変わりません。基本シャシはRA66Vで、4ドア・セダンのMS60-BまたはRS60とは異なります。エンジンは直4の5R型のみで、直6の4M型搭載車はなし。サスペンションがリーフリジッドになります。(4ドアPCはコイル。)後部デッキ(荷室)の積載量との関係でしょう。
バン警察仕様は全てドラムブレーキ。(セダン警察仕様でも4Mエンジン搭載車だけがディスクブレーキ。)燃料タンク容量も60リッターに落ちます。(4ドアPCは70リッター。)

バン警察仕様は全て3速コラムシフトで、フロアシフト車はありません。型式記号中の「Y」がコラムシフト車を表します。

4ドアセダンの全長4680mmに対して、バン全長は4690mmで10mm長くなります。ホイルベースは2690mmで変わりません。全幅の1690mmも変わりません。

事故処理車に固有の装備としては、フロントシート助手席側背当て部に折りたたみ式記録用テーブル(後席側から使用するもの)、デッキ内に格納箱、移動式投光器、延長コード1本、脚立、などを装備します。上の画像の図面はRS66VZ-YC事故処理車です。

点滅ダイヤペットのバリエーション


0903番は、初期生産モデルではレッドビーコンのパーツが異常に長く、その後通常のダイヤペットのレッドビーコンと同じ程度の長さになりました。
当時は点滅球で小さなサイズのものがなく、大きな電球を収容するためにこういうことになったものと思われます。現在の目で見ると、1/24用としても大きいかな、と思わせるサイズです。「これでは大き過ぎるんじゃないか」ということで企画がストップせずに、そのまま製品化してしまうところがスゴいです。(サクラ製の点滅モデルにはさらに大きなレッドビーコンをつけたものもありますが。)

ビーコンの長い初期モデルではパッケージも違い、前面の窓の開いていないイラストレーション箱になっています。レッドビーコンの短くなった中期以降から、その後のダイヤペットの定番となる、窓アキ箱と共通のパッケージになりました。
こういうバリエーションに手が届くのも、コレクション対象を「パトカー」に絞っているおかげだと思っています。

警察グレーの鑑識車!!


ダイヤペットの「鑑識車」。
というのはウソで、250番のノーマルのバンをカスタマイズしたもの。
こうしてフロントグリル回りなどにペイントを入れてみると、基本形の素性はなかなか良いことがわかります。

当時は「タンポ印刷」などという技術はまだありませんでしたから、グリルなどは単にメッキプラのパーツをはめ込んでおく以外に方法がなかったわけです。現在のトミカ・リミテッド・クラスの印刷技術を適用すれば、ダイヤペットの金型はもっと生きたかもしれない、と考えると残念です。
ダイヤペットには基本形のプロポーションが意外に良いものも多く、可動部の合いの悪さやメッキグリルなどで随分と損をしていると思われます。

RS66VZ系「鑑識車」「保全車」の実車


警察仕様の型式名は複雑に異なりますが、用途別の装備の違いだけで、そう大きな差はないようです。最も大きな差は、「事故処理車」だけが白黒塗装であることです。

鑑識車はレッドビーコンあり、捜査用車と保全車はビーコン/サイレンともになしです。鑑識車のビーコンは「隠し式」ではなく、常時露出している固定式のようです。
セダンの説明をしている時には気が付いていなかったのですが、「隠し式」の場合には室内側に収容部と水抜きホースを設けなければならない関係から、ビーコンの取り付け位置がルーフ中央になり、固定式の場合にはフロントグラス寄りに設置されるようです。

保全車になると、バッテリもNS40Zとなり、(詳細な比較確認はしていませんが)市販のバンと大きな差はないのではないかと思います。保全車は無線機も搭載しません。したがって無線機雑音防止用のボンドストラップ装備も不要になります。

バン警察仕様のボディカラーについて再度整理してみると、
◆事故処理車──白/黒 または 警察グレー
◆鑑識車────警察グレー または グリーン(「霧笛」)
◆捜査用車───グリーン(「霧笛」) または ブルー(「潮路」)
◆保全車────警察グレー または ブルー(「潮路」)

「霧笛」とか「潮路」というのは、トヨタ側で付けている塗料色名と思われます。
それと、この塗色適用は、あくまで「くじら」バンに限っての一覧で、他車種と共通かどうかは未確認ですので念のため。
内装はくじらバン警察仕様に全て共通でブラック、前席ベンチシート(ヘッドレスト付き)です。

イイノ特注「くじら」トミカ


2004年3月発売(3/9〜4/8の間出荷)のイイノ特注・くじらPC。「警視庁」「千葉県警」「沖縄県警」の3点になります。
何を思ったか、グロリアHT、ハコスカに続いてくじらのパトカーを3点も発売したものの、「トミカくじ」のくじらパトカーと完全に企画がカブってしまった上に、「トミカくじ」が後期くじらを選んでいることや、細部の仕上げの面でもかなり苦しい戦いとなってしまいました。ただしタンポ印刷での「沖縄県警」マーキングは稀少なので、積極的に評価したいと思います。よく調べていませんが、最近のカプセル・エムテック・シークレットの「フイット沖縄県警」を除けば、トミカでは沖縄県警ははじめてなのではないでしょうか。

例によって屋根上にモーターサイレンを載せていますが、何度もふれているように60系PCではサイレンはエンジンルーム内蔵です。
BBSで書いたように、先日モーターサイレンを屋根上に載せたグレーの警察バン(セドリックかグロリア系の鑑識車か??)を目撃したので、「屋根上にサイレンは絶対載せない」とは言い切れないのですが、少なくともくじらに関しては可能性希薄です。

箱はイイノ・オリジナルのものですが、イラストレーションはどうやらミニカーを見ながら「実車ふう」に描いているようですね。モーターサイレンや、ドアサイドの「警視庁」マーキング位置、警察エンブレム位置などにそれが表れています。「箱と内容のミニカーが違ってしまう」ことに気を使っているのだと思いますが、やはりイラストレーションは実車写真を取材対象にして描いた方がいいと思います。何かと混乱や誤解を生む原因を作ってしまいますので…。

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