ミニカーコレクターはアイスクリームがお好き

Diecast collectors like Ice Cream Trucks





「サブライン」づくりのすすめ


皆さんは、ミニカー・コレクションを心底から楽しんでいらっしゃいますか?

コレクションをはじめてしばらくすると、「コレクションの対象を絞ろう」というような「良からぬ」考えがアタマをもたげるものです。あるいは、「いつでも、比較的容易に入手できる」ものと、「これは、ココを逃すと入手はむずかしいかもしれない」というような判断がある程度つくようになって来ます。大変結構なことのようですが、ココで悲劇が始まるのですね。「自分のコレクションの対象ジャンルに入っている」「世界2500台限定で、後からでは入手しにくくなる」といった理由のもとに、内心ではそれほど欲しいとも思っていないモデルを、半ば「義理」と「惰性」で買い続けるようになるのです。逆に大変に気になり、魅力も感じ、後ろ髪も引かれるモデルを、「集めているジャンルと違うから」という理由で買わずに見送ったりします。

私は「ポリスカー」「救急車」を、(特にこのサイトを開設して以来)自分のメイン・テーマだと思ってはいるのですが、だからと言って、ポリスカー/救急車なら何でも買っているかというと、決してそんなことはないのです。1/43クラスの新製品は、ほとんど買っていない、と言っても過言ではありません。
やはり、「義理」と「惰性」だけで馬鹿にならない価格のモデルを買うのではなくて、「本当に欲しい」と思って発売を心待ちにしたり、入手した暁には(丁度子供の頃のクリスマス夜のように)そのモデルを枕元に持って来て眠るぐらいの「ワクワク感」を持ちたいものだと考えているからです。

ですから、「ジャンル」とか「スケール」とか「メーカー」とかいった「理屈」ではなくて、そのモデルの持っている「空気感」や「佇まい」を大切にしたいですし、その「佇まい」がどうしても気になる時には、入手するようにしたいと思っているのです。なので私は、「ポリスカー」「救急車」といったコレクションのいわば「メイン・ライン」のほかに、実はいくつかの「サブ・ライン」(サブ・テーマ)を持っています。そのひとつが、今回はじめてご紹介する「アイスクリーム・トラック」です。
ここのところ、「メイン・ライン」であるパトカー/救急車より夢中になったコレクションの、半ば以上クレージーな「熱気」を感じていただければ幸いです。。(2007.11.3)


Bibliography

-The Mister Softee Story, Famous Fleets Volume Five by Steve Tillyer, The Nostalgia RoadSeries, Trans-Pennine Publishing Ltd. Cumbria UK, 2000
-Wall's Ice Cream, Famous Fleets Volume Eight by Alan Earnshaw, David Hayward and Chris Stevens, The Nostalgia Road Series, Trans-Pennine Publishing Ltd. Cumbria UK, 2005
-Corgi Toys by Dr.Edward Force, 3rd Edition With Updated Valie Guide & Consolidated Mettoy Era Variations List Revised by Bill Manzke, Shiffer Publishing Ltd. PA 1997
-Encyclopedia of Small-Scale Diecast Motor Vehicle Manufacturers by Kimmo Sahakangas, Dave Weber and Mark Foster, Iconografix WI 2006
-Lesny's Matchbox Toys, Regular Wheel Years, 1947-1969 by Charlie Mack, Schiffer Publishing Ltd. PA 1992



I like ice cream trucks and ice cream also

In Japan the restrictions about import of industrial commodites including toys had been abolished in the 1960s. So we were able to find a lot of European and US toys at the shop fronts in our area since about 1964. It was the year that the Olympic Games was held in Tokyo.
Toy guns from Mattel, costruction toys from Lego and diecasts from Corgi, Dinky, Lesney and others. Japanese collector had been collecting cars from Japanese brand, Asahi Modelpet and Taiseiya Micropet those days. But they were surprised very very much because the hood of the imported toy cars could be opened and a precise engine was mounted there!

The toys from Europe and the US had been very very special and unordinary.
Children excited for the precise figures and animals attached to the cars from Corgi, and hoped to get the circus tracks with colorful paints as their Christmas gifts.

Unfortunately the ice cream trucks do not go towns around with musical chime in Japan, but my mother had bought a Mister Softee ice cream truck from Corgi for me. So I can know the ice cream trucks since my childhood and I am continuing owning a Mister Softee truck.This is the reason why I like ice cream trucks. The latest products from Oxford Diecast in UK are great and bring back the memory about the excitement in my childhood.

Of course I like ice cream also, now we can enjoy a cup of Strawberry or Mango Sundae with fruity sauce at all of McDonald's shops in our country. I recommend to enjoy ice cream and ice cream trucks if you like collecting diecast cars...

コーギー製アイスクリーム・バンのノスタルジア
おかげさまでこのサイトも、9月で開設4年になったのですが、開設当初には比較的国産車系の話題が多かったものが、次第に欧州系のモデルの話題が多くなって来ていることにお気づきかと思います。(実は私自身がその点を大変に気に掛けているためかもしれませんが。)

私たちにとって「ノスタルジック」なクルマとは、実車では国産車になるのは当然ですが、実は「オモチャのクルマ」に限って言うなら、私たちの年代のノスタルジアの中には、コーギーやマッチボックスのミニカー、モノグラムやレベルのプラモデルなどが、実際かなりのインパクトとともに入って来る、言わなければならないでしょう。。

ミニカーと言えばフリクション付きのミクロペットから入った私たちにとって、「トランクを開けるとスペアタイヤが入っている!」「旅行カバンが入っていて、そのカバンが開く!」といったギミックを持ったコーギー製品が、どれほどの驚きと、キラキラ光るような羨望をもって迎えられたか、想像していただけるでしょうか。あるいはクルマのプラモデルと言えばモーターを入れて廊下の端から端まで遮二無二突っ走るものだった頃に、エンジンのファンベルトが再現されたレベルやモノグラムのキットの箱を開けて、「アメリカ」の匂いを嗅いだ時の興奮をわかっていただけるでしょうか。

特に最寄駅の商店街の中にあったお店の品揃えの関係で、私が手にしたミニカーはディンキーよりもコーギーの方が多かったのです。私はこれまでに何度も手持ちのミニカーを処分していますが、未練無く手放せるものと、一応残しておきたいものとに分かれるのですね。その中で、理由は分からないままに、手元に残っている1台の中に、このコーギーのアイスクリーム・トラックがあります。


コーギー428-A1 コマー・キャリアー・アイスクリーム・トラック 「ミスター・ソフティー」
Corgi 428-A1 Karrier Ice Cream Truck, Mister Softee


ドクター・エドワード・フォースによれば1963年3月〜1966年の生産。
私自身が子供の時に買い与えられたモデルで、もちろん私にとっての「アイスクリーム・トラック」の第1号です。
キャンティーン(荷台に架装されたお店部分)の両サイドのガラスがスライドするほか、裏板側にあるツマミを回すことで、中のアイスクリーム屋さんフィギュアを回転させることが出来ます。実はこのギミックに気が付いたのは、買ってもらってからかなり後になってのことでした。



エドワード・フォースの資料でも、バリエーションはこの「ミスター・ソフティー」の1点のみ。(違うカラーリングのモデルを英国のネット・オークションなどで良く見かけますが、これらは全てカスタム(リペイント)です。)その後、塗装をオリーブドラブ1色に変えられて、359-Aの「ミリタリー・フィールドキッチン」(1964年2月〜1966年)も作られましたが、こちらは全く夢も希望もありません。おそらくはディンキーの軍用車シリーズの充実に対抗するための政策的転用ではなかったかと想像します。

実はこのモデル、英・米のネットオークション上などでも、美品はなかなか馬鹿にならない価格になります。その理由を考えてみると、以下のような事情が浮かび上がってきます。

1963年3月〜1966年の生産ということで、生産期間が比較的短い。
子供は「ミニカー」も「アイスクリーム」も大好き。したがって「アイスクリーム・トラックのオモチャ」というのは子供向けトイの定番で、多くが子供に買い与えられ、遊ばれてツブされてしまった。
子供は買ってもらったら箱など捨ててしまうので、箱付き・ミントコンディションで現存するものとなる
と、さらに少ない。

コーギー447-A1 フォード・テームズ・「ウォールズ・アイスクリーム」バン
Corgi 447-A1 Ford Thames Wall's Ice Cream Van



その後コーギーの資料本などを入手するにつけ、コーギーはもうひとつアイスクリーム・バンのモデルを作っていることを知りました。それがこのモデルで、フォード・テームズにアイスクリーム・キャンティーンを架装した小振りなモデルです。1965年3月〜1967年までの生産で、これまた生産期間はあまり長くありません。

「ミスター・ソフティー」のアイスクリーム・トラックが、その後も私の手元に何故か残り続けたこともあって、このフォード・テームズと2台並べてみたいという欲求が、ある日頭をもたげました。しかしこのモデルも、常になかなかの価格が付くので、入手したのは随分と後になってからのことです。

その間に、私はメインテーマとしては標準スケールの国産車をやったり、小スケールの消防・救急・パトカーをやったりしていますから、考えてみれば私のアイスクリーム・トラック趣味は随分と長い時間をかけて醸成されて来たものだと言えるでしょう。

コーギー474-A1 フォード・テームズ・「ウォールズ・アイスクリーム」バン
(ミュージカル・チャイム)
Corgi 474-A1 Ford Thames Wall's Ice Cream Van with musical chimes


1965年10月から、1968年の生産。品番も似ていますが、「447」番の中に「ミュージカル・チャイム」(手回しオルゴール)を仕込み、リアに突き出たクランクを回すことで「チャイム」が鳴るようにしたもの。電子装置を組み込むことのできないこの当時としては、「音の鳴るミニカー」というのは異色の存在でした。チャイム付きの分、こちらの商品には、フィギュアや紙製展示台は付属しません。生産期間も「447」番と重なっていたことになります。

日本ではあまり馴染みがありませんが、英・米のアイスクリーム・トラックは、チャイムを鳴らしながら路上を流したのですね。子供たちはその音を聞いて、アイスクリーム屋さんが来たことを知ったのです。屋根上の看板には「STOP ME AND BUY ONE」と書いてありますが、音を聞いたらクルマを止めて、アイスを買ってくれ、というシステムなのです。つまり我が国における「石焼きいも」と同じです。



474番では、車内のハンド・オルゴールを鳴らすために、
車体後部に大きなクランク・ハンドルが付きます。


このチャイムのことを「ジングル」と言います。クリスマス歌曲の「ジングル・ベル」の歌詞は、「Jinglebells, jingle bells, Jingle all the way! 」と歌いますが、これは道すがら、ずっとジングルを慣らし続けろ!と言っているわけです。
アイスクリーム・トラックのジングルは、どうやらブランドによって違っていたようです。つまり、「ウォールズ」と「ミスター・ソフティー」ではメロディーが違うはずです。コーギー「474」番のモデルには、ジングルのメロディーを書いたミニチラシが付属していた形跡がありますが、残念ながら入手していません。
ミスター・ソフティーのウェブ・サイトを開くと、ジングルが鳴ります。ぜひ耳を傾けてみてください。

http://www.mistersoftee.com/

コーギーのアイスクリーム・トラックは全て純然たるスケールモデル
さてコーギーのこの2点、どこかで写真をご覧になったことも多いかと思いますが、実在するクルマのミニチュアであることは意外に知られていないのではないでしょうか。

こういった特車系のミニカーには、はじめから実車を取材して設計されているものと、バン/トラック/ワゴンなどの既存金型にシールなどを貼り付けたバリエーション・モデルがあることはご存知の通りですが、実はコーギーのアイスクリーム・トラック2点は、実車に忠実なスケールモデルなのです。



英国に「トランス・ペニー・パブリッシング」という出版社があり、「ノスタルジア・ロード」というシリーズの小冊子を刊行しているのですが、この中に「ザ・ミスター・ソフティー・ストーリー」(フェイマス・フリーツVol.5)、「ウォールズ・アイスクリーム」(同Vol.8)という特集本があり、これら実在のアイスクリーム・トラックの姿を堪能することができます。各500部の限定版ですが、特に「ウォールズ」の方は、在庫切れだったのを取り寄せてもらったので、著者サイン本が来てしまいました。

見慣れたコーギーのモデルが、実在するクルマであることにある種の驚きと感動を覚えるとともに、「ウォールズ」や「ミスター・ソフティー」というアイスクリーム・ブランドそのものを知ることで、ミニカーへの見方も変わって来ます。やはりミニカー・コレクションにとって資料は非常に重要なものであることを痛感するとともに、こうした資料本が刊行される英国のコレクション環境をやはり羨ましく思います。


ウォールズ
──大コングロマリット「ユニリーバ」のアイスクリーム・ブランド

「ウォールズ・アイスクリーム」の前身である「トーマス・ウォール・アンド・サン・リミテッド」はもともと食肉業者で、トーマス・ウォールは1905年に家業を承継しました。1913年に既にアイスクリームの製造を計画しましたが、これは中心事業であるミート・パイやソーセージの売上げが、夏の間落ち込むことをカバーする意図があったようです。ところが第1次大戦でこの計画は延期され、実際にアイスクリーム製造をはじめたのは1922年ですが、「トーマス・ウォール・アンド・サン・リミテッド」は1920年には既に「マクフィッシェリーズ」社の傘下に、さらに1922年には「リーバ・ブラザーズ・リミテッド」(その後、1930年にオランダの「マーガリン・ユニー」と合併して「ユニリーバ」となる)社の傘下に入っていました。

ユニリーバは、その後ウォールズ社をアイスクリーム事業会社(T Wall and Son (Ice Cream) Ltd)と食肉事業会社(T Wall and Son (Meats) Ltd)に分割。アイスクリーム事業は1981年に「バーズ・アイ・ウォールズ・リミテッド」に再編。食肉事業会社は1994年に売却しています。

アイスクリーム製造は1922年にロンドンのアクトン工場で開始。1959年にグロスターに新工場を開設。アクトン工場は1983年で閉鎖されました。つまり「ウォールズ・アイスクリーム」は、当初からユニリーバの持つアイスクリーム・ブランド、ということになります。ユニリーバは、ラーマ「マーガリン」、ラックス(石鹸)などのブランドを持つ、一大コングロマリットです。



「ホームレンジ」での家庭用パックの広告で、
これは当時の雑誌広告の現物を英国から入手したもの。
アメリカのホームドラマや、ノーマン・ロックウェルのイラストレーションを思い出させる
アート・ディレクションで、大変に魅力的です。電気冷蔵庫の普及とともに、
アイスクリームを家庭でストックしておくことのできる時代がやって来ました。


ウォールズ・アイスクリームのビジネス・モデルは3つから成り立っていて、それらは「ホーム・レンジ」「インパルス・レンジ」「キッズ・レンジ」の3つでした。
「ホームレンジ」は、お徳用の家族向けパックをスーパーマッケットで販売するビジネスで、1959年のグロスター新工場の開設以降、各地のスーパーマッケットの出店拡大とともに隆盛して行きました。
「インパルス・レンジ」と言うのはいわば「衝動買い商品」ということで、「マグナム」「ソレロ」「コルネット」といったサクセス・ブランドを生み出して行きました。そして、この「インパルス・レンジ」「キッズ・レンジ」にとって極めて重要な役割を果たしたのが、アイスクリーム販売車だったのです



コーギーのモデル化している「フォード・テームズ」(アングリア)のほか、
「モリス・マイナーLCV」、「モリス(後にBMC)LD」など、大小の販売車が使われました。


ミスター・ソフティー
──アメリカ生まれ、フランチャイズ式移動販売車によるビジネスモデル

Bringing "The Very Best" to Kids & Families Since 1956

一方「ミスター・ソフティー」は、アメリカを本拠とする、全米最大のソフトクリーム・トラック・フランチャイズで、1956年にウィリアム・コンウェイ、ジェームズ・コンウェイによってフィラデルフィアで設立されました。
現在は15の州で350のフランチャイズと600台のアイスクリーム・トラックを有しています。現在の本社はニュージャージー州にあり、いまでもコンウェイ家の経営下にあって、現在の社長はジェームズ・コンウエイ・ジュニアです。いまでもホームページ上には、ニューヨーク地区を中心とした「ドライバー募集中!」の広告があります。保証金5,000ドルと保証人2人が用意できれば、アイスクリーム・トラックの供与を受けて、フランチャイズ・ビジネスを始めることも出来るようです。

1958年には「ミスター・ソフティー」は米国内では「シボレー・パネル・バン」などの米国車を使用していますが、同時期に英国進出も果たしており、英国内での販売に使われたのが、コーギーのモデル化している、「コマー・キャリアー・1トン・バン」でした。このトラックは、車内に2台のフリーズ・マシンを装備していて、車内でソフトクリームを製造することができます。つまり「ミスター・ソフティー」は英国内にアイスクリーム工場を持つ必要はなく、クルマと、それをオペレーションするフランチャイジーを英国内で獲得しさえすればいいわけです。「海外進出」にこれほど適したビジネスも無いと言えるでしょう。



コーギー「428」番のパッケージには、「Karrier Smith's Ice Cream Van」「Smith's Mister Softee IceCream Van」といった製品名表記があります。一方で前掲書「ザ・ミスター・ソフテイー・ストーリー」では、車名を「Softee Commer Karrier Van」としています。この、「Commer」「Karrier」「Smith's」の関係を解明してみましょう。

「キャリアー」(Karrier)は、もともと英国の商用車のブランドで、1904年にウエスト・ヨークシャーで創業した、「クレイトン&カンパニー」の商標でした。1908年に「Karrier」ブランドでのクルマの生産を開始し、1920年には社名を「Karrier Motors Ltd.」に変更しています。
「Carrier」は「運搬人」「運送業者」「荷車台車」などを意味する普通名詞なので、アタマを「C」ではなく「K」にすることでコトバとしての「顕著性」を作り、商標登録をしたのではないかと想像します。

1934年に「キャリアー」は、株式の公開買付によって「ルーツ・グループ」(Rootes group、ハンバー/サンビーム/ヒルマンなどのブランドを有していた自動車メーカー)の傘下となりますが、同時期の1931年に「ルーツ・グループ」は同じく商用車系の「コマー」車も傘下に収めていたため、いくつかの「Karrier」商用車には、コマーのディーゼル・エンジンが積まれました。
そして1967年に、「ルーツ・グループ」はクライスラー・ヨーロッパに承継され、全てのコマーシャル・モデルは「ダッジ」を名乗るようになります。クライスラーは結局この後、英国でのオペレーションに見切りを付け、1978年に事業をプジョーに売却します。

コーギーが「キャリアー」の車名で作っているモデルは、したがってクライスラーによる買収以前の「Rootes group」時代のクルマで、一部は「コマー」製のエンジンを持っている、ということのようです。前掲書「ザ・ミスター・ソフティー・ストーリー」中の写真では、コーギーのモデルと同型車はフロントに「KARRIER」のバッジを付けています。保育社・カラーブックス『世界のミニカー』(中島登著・1980年初版)では、コーギーのミスター・ソフティー・トラックの車名を「キャリアー・バンタム」と表記しています。
また、「Smith's」というのは、どうやら食品販売キャンティーン(移動販売車・調理車)系のボディ架装メーカーのようです。コーギーは401番でも「Smith's」「Karrier」の組み合わせによるモバイル・キャンティーンを作っています。

上の画像で、背景の本の中の写真に写っている人が、「Smith」社のトム・ゴールドスミス(TomGoldsmith)さんで、1958年に制作した5台のキャンティーンのうちの1台(ナンバープレートはJCN633)
の前で撮ったスナップです。

ミスター・ソフティーのリングとバッジ


ここのところの私の日課は、「ice cream」で英・米両方のネットオークションに検索をかけることでした。
「police」でも「ambulance」(救急車)でもないところが問題と言えば問題なのですが、ダイキャスト・カーでの「アイスクリーム」の出品は、「ポリス」などに比べればはるかに少ないですから、短時間で新しい出品をチェックすることができます。
ある日ちょっした気の迷いから、検索対象を「ダイキャスト・カー」でなく、「オール・カテゴリー」に広げてみたのですね。大半は家庭用のアイスクリーム製造器とか、レシピ本とか、店からはずして来た看板とかですが、大変に面白いものをいくつか発見しました。

「ミスターソフティー」がノベルティまたはキャンペーンの賞品として作ったと思われるバッジとリング
で、ともにコーギーのミニカーについているのとと同じ、「ミスターソフティ」のキャラクターが描かれています。バッジは金属製のいわゆる「缶バッジ」で「SAFETY CLUB」の文字があります。
ミスター・ソフテイー・トラックは、ボディ後部に「SLOW! WATCH FOR OUR CHILDREN」(速度落とせ! 販売車の周囲にいる子供たちに注意!) といった標語を書いているものがあり、交通安全に対する意識が高かったようです。バッジの「SAFETY CLUB」も、おそらくは子供たちに交通安全を啓発するためのものだったのではないかと想像します。

ミスター・ソフティーの顔の色が違うものがあるのは、アフリカ系アメリカ人に配慮したものかと思いきや、どうやらそうではなく、単に「チョコレート」や「バニラ」を表しているようです。
リングはプラスチック製、子供サイズで、大人の指には到底入りません。

これらはイギリスではなく、アメリカから入手しました。アメリカには、「ファストフード・コレクティブル」などというコレクション・ジャンルがあって、マクドナルドの歴代のオマケなどが取引されます。小さなプラスチツクのリングひとつを箱に入れて発送してくれます。
最近のミスター・ソフティーのステップバンのプラスチック製のモデルで、チャイムを内蔵したもの(たぶん電子音でしょう)と、貯金箱になったものの2種があって出品者(それも2人)と交渉したのですが、合衆国内にしか発送できないとのことで、残念ながら入手できませんでした。

リプロ・ボックス(複製箱)


コーギーの2つのアイスクリーム・トラックは、先にお話したように良い状態で残っているものが少ないのですが、オリジナル・パッケージを持つものとなると、さらに稀少になります。

特に「フォード・テームズ」の方は、外箱だけでなく、ディスプレイ・スタンドを兼ねた内箱と、フィギュア2人が付くので、これらを完備しているものは150〜200ポンドほどの価格が付いているものが珍しくありません。(2007年10月末現在で、1英ポンドは235円ほどです。)子供が「アイスクリーム・トラック」のミニカーを買ってもらったとして、箱など、すぐに捨ててしまうのが当然だからです。当時の箱が残っているということは、コレクターの手にあったことを意味するわけで、こうなると数が少ないのは仕方のないことになって来るでしょう。



そこで英国のコレクターは「リプロ・ボックス」という「遊び」を考えました。オリジナル箱をカラーコピーまたはスキャナで取り込み、出力したものを安い価格で販売するようにしたのです。
特にコーギーでは、「バットマン・カー」「アンクルから来た男」など、パッケージがディスプレイ台を兼ねているものが多くあるので、需要があるのは当然でした。



リプロ・ボックスの問題点としては、最近のカラー出力技術があまりにも上がってしまったために、セカンド・ハンドで何人かの人の手を経るうちに、オリジナルと誤認する事態が発生することでしょう。
現物を店頭で手にとっての上でならいざしらず、ネットオークションで画像を見ただけでは、「二次元の魔術」による錯覚で、リプロの判別は極めて困難になるのです。

英米のネットオークションでは、「リプロ・ボックス入り」のものはその点明記されていますが、(悪意ではないとしても)出品者の知識レベル次第では「リプロ」を「オリジナル」と誤認しているおそれもあるわけです。私も先日、わざわざ「Original Box」と書かれているものが、リプロ箱だった、ということがありました。
日本では、まだまだリプロ・ボックスは普及していないようですが、日本のコレクターが好むと好まざるとにかかわらず、これからは海外買い付け品などともに日本にも入って来るようになるでしょう。
いずれにしても、私は決してリプロ・ボックス反対派ではなく、大いに楽しみたいと思っています。
日本のコレクターも、もっと大量にリプロ箱の洗礼を浴びて、オリジナルとの識別眼を養っていただきたいと思っています。識別ポイントは以下のような点です。

レーザープリンタ(カラーコピー)出力は、トナーが紙の上に「乗っている」感じでツヤがある。これに対して印刷のオリジナルは、インクが紙に染み込んでいる感じでテラテラ光らない。
(もちろん紙質によって、オリジナルでもある程度のツヤを持つ場合があります。)
インクジェット出力は、インクのツヤは無い反面で、見た目に粒子上のザラザラ感がある。
オリジナルをそのまま原稿としているので、汚れ・キズ・剥がれなどをそのまま「写真のように」取り込んでいる。
コーギー初期の青箱などは明らかに色調が違う。
厚紙を使っても、裏面は「白」である。紙質の異なる2枚を貼り合わせている場合は、表面を剥がすことができる。



イギリス/ドイツ/フランスなどのネットオークションでは、「箱」として組み立てられたリプロボックスの他に、1000点ほどのアイテム(パッケージ/カタログなど)をデータCDにおさめたものや、オリジナルを反射原稿としてオフセット印刷されたものなども売られています。

私も試しに、このデータCDを買ってみました。イギリス人はデータCDを「DVD」だと言って売っています。内容は、古い箱を開いてスキャナで読み込んだだけのJpeg画像の集積です。出力しようとして一番困るのは、実物の原寸サイズがわからないことです。コーギーのこれらトラック/バン類では、妻側の長辺が50mm程度にそろえられている形跡があるので、これを頼りにいったんPowerPoint上に貼り付け、長さをルーラーで確認しながら出力する、という方法を採ってみました。



ヨレヨレの箱を読み込んでいるものもあり、画像サイズが大きい割りにはあまり解像度も高くないようです。水平・垂直が印刷原稿のようにビシッと決まらないので、切り抜いて組み立てても、いまひとつシャキッとしません。これを厚手の紙に出力して、ある程度のクオリティに持って行くためには、まだ研究の余地がありそうです。色についても少し強めに出ているようで、画像段階で少し色味を調整することも必要かもしれません。おそらくもとの画像データそのものが良くないのでしょう。ま、あまり本物そっくりになっても問題ですから、遊びのネタとしては、これでいいのかもしれませんね。

リプロ箱の出品者の中には、「ウチのものは、ヨソのとちょっとばかりクォリティが違うから、ぜひ見てみてくれ」などと書いている人がいるのですが、気持ちはわかりますね。きっとこのCD以外のデータから作っているのでしょう。



コーギー「428」番のパッケージには、少なくとも2種のバリエーションがあり、
私の入手したデータCDには、両方が収録されていました。


リペア・パーツ


コーギーには、ディオラマ的なディスプレイを意識したフィギュアやアクセサリーを持つものが数多く存在するのはご存知のとおりです。
447-A1の「ウォールズ・アイスクリーム・バン」のショップ・マスターと子供のフィギュア、448-A1のポリス・ミニ・バンの警察官と警察犬、475-A2のシトロエン・ウインター・スポーツのスキー選手、485-A1のミニ・カントリーマンのサーファー、256-A1・フォルクスワーゲン・サファリの「サイ」等々。

これらはパッケージとともに製品の重要な要素を構成していたわけですが、パッケージが失われているものではアクセサリー類も失われているものが多いのです。
例えば私が子供の頃に(「ミスター・ソフティー・トラック」ではなくて)、「ウォールズ・アイスクリーム・バン」の方を持っていたとしましょう。箱は家に帰って来たと同時に捨てられ、人形の方はさんざん遊んだ末に、その後の引越しや何かに遭遇して、間違いなく紛失しているはずです。
現に、オールドタイマーのデイムラーやT型フォードには合計6人もの人形が乗っていたのですが、現在は全員失踪していて、1人も残っていません。

さらに悪いことに「ウォールズ・アイスクリーム・バン」には、自分で貼るようになった「シール」が付属していたのですね。ドア・サイドの「Wall's」ロゴタイプはデカールではじめから貼られていましたが、その他のデコレーションを自分でするようになっていたのです。おそらくは作業工程上の問題でこういうことになったのでしょうか。こうなると、シールが未使用で残っている、などということはまず「奇跡」に近く、水貼りデカールでなかったことが災いして、いったん貼られたシールも脱落しているモデルが多数発生することになったのです。
したがって、「ウォールズ・アイスクリーム・バン」を良い状態で獲得しようとすれば、本体がリペイントされていないことはもちろんですが、パッケージ/人形/シールが揃わなければならないことになります。これは、多くが子供に遊ばれてしまったこのモデルとしては、かなりむずかしいことなのですね。



シールも説明書も「複製」です。


そこで英国のコレクターたちは、これらを補うパーツも用意しました。
リプロボックスはもとより、人形の、シール、シールの貼付位置を説明したインストラクションまで、複製品を入手することができます。
人形などは、おそらく複数の工房で複製品が作られているものと思いますが、私の入手したものはペイントにツヤがあり、モールドもやはりオリジナルに比べればかなり甘いと言わざるを得ません。しかしこれも、オリジナルと容易に識別できるようにするための「良心」的な処置なのではないか、と考えています。これらは「リペアパーツ」と言われており、欧州では主としてコーギー/ディンキー関連で脱落しやすい緊急車の屋根上灯などまで売られています。

英米では、ミニカー本体もレストア(リペイント)済み、リプロは箱にリプロ人形付き、といった商品も売られていて、これはこれで結構人気があり、馬鹿に出来ない価格になります。オリジナルで状態の悪いものより高価になることさえあります。とは言っても、オリジナル完品はさらに高価ですから、それよりも安い価格で完品の雰囲気を楽しむためには、悪くない選択肢の一つと言えるのです。



オリジナル(左)とリプロダクション(右)。
オリジナルから型をとって複製する場合、もう少し精度はいいはずですが、
技術が悪いのか、オリジナルと混同しないように、ワザと「この程度」にとどめているのかは謎。


私の入手した447-A1「ウォールズ・アイスクリーム・バン」は、ドア・サイドのデカールは良い状態で残っていますが、キャンティーン部に貼るように指示されていたはずのシールはひとつも残っていません。状態を見る限りでは、貼ってから脱落したというよりは、はじめから貼られないままで保存されているうちに、シールが台紙ごと失われたものと思われます。これに対して474の「ミュージカル」の方には、色褪せがひどいとは言えシールがかなり残っていました。(黄色の印刷インクは、赤・アイ・スミより褪色が早いのです。)
このシール、小さいものも多く、貼り付け場所を指示したインストラクションが同梱されていたものの、指定とは違う位置に貼られたり、すぐに脱落してしまったものも多いのです。リペア用シールは、こうした古いモデルたちを蘇らせてくれます。




ちなみに「447」番の方に、リペア・シールを貼ってみました。貧乏性な私は、購入したシールを一度カラーコピーし、コピーの方を貼り付けています。少なくともこういう「紙もの」は、せめて画像データを残しておくことをお奨めします。おかげで古いコーギーは、随分カラフルになりました。

ところで、何かお気づきになりませんか? 画像では小さく見づらいですが、リアに貼るラベルには「CAUTION LEFT HAND DRIVE」の表示があるのです。「左ハンドル車です。ご注意ください。」の注意書きです。イギリス車であるフォード・テームズ(アングリア)の英国内向け仕様は当然右ハンドルのはずですから、大変に奇異なことと言わなければなりません。
これは私の想像ですが、ユニリーバ(ロンドンと、オランダのロッテルダムに本社を置く二元上場会社)傘下にある「ウォールズ」としては、右側通行のヨーロッパ本土での使用の便宜を考えて、左ハンドル車を標準仕様としたのではないでしょうか。



「ミュージカル」に残っているオリジナル・シール(右)と、リペアパーツとして売られていたシール(左)を比較してみると、微妙に違います。そもそも「447番」と「474番」とで、異なるシールが同梱された可能性も無いではありませんが、そんなことをコーギーがする必要もないので、リペア用シールはオリジナルからの複写ではなく、新しく版下を起こしているのではないか、と想像します。

キャンティーン側面に付く星型のデコレーションなどは、そもそもパターンが違っているので、これもリペアパーツであることを明確にしておくための配慮とも受け取れます。

オクスフォード・ダイキャスト



英国・ウェールズ、スワンシーという街に、「オクスフォード・ダイキャスト」というミニカー・メーカーがありますが、現在この会社から、数多くの「アイスクリーム・トラック」が発売されて、英国のネットオークション上を賑わせています。
コーギーと同じ「フォード・テームズ」の「ウォールズ・アイスクリーム」仕様を当初3種、その後さらに3種が追加されました。3台をひとつのプラスチックケースにおさめたものと、単品で販売されているものとがあります。コーギー以来、ほぼ40年の歳月を経ての、アイスクリーム・トラックの大量発生・大襲来です。

このモデル、ネットオークション上では「フォード・アングリア」として売られており、メーカー品番でも「ANG」を与えられています。1959年以降のフォード・アングリア105Eですが、このクルマの商用車版を「テームズ」と言うようです。旧コーギー「447」「474」番での車名は「テームズ」ですが、オクスフォードのサイト上でも「テームズ105E」と「アングリア」を同一視しており(テームズをクリックした開いたページに「アングリア」と書いてある)、基本的に同じクルマと考えて良いのではないかと思っています。イギリス・フォードがアメリカ車ふうのデザインを導入した作ったクルマで、映画「ハリー・ポッター」で、「空飛ぶクルマ」として登場します。保育社・カラーブックス『世界のミニカー』(中島登著・1980年初版)でも、コーギーのモデルを「アングリア」と表記しています。



「セット1」の1台目。キャンティーン部分はコーギーのものより背の高いタイプを背負います。
さすがに新しい製品だけあって、細部やマーキングが綺麗。右ハンドル。



「セット1」の2台目。コーギーと同じテント型のキャンティーンですが、
キャブ屋根上の看板形状がコーギーとは異なります。このモデルは6台中で唯一の左ハンドル。



「セット1」の3台目。こちらは販売車ではなく、配送/営業車でしょう。右ハンドル。



「セット2」の1台目。テント状のキャンティーン屋根、キャブ上の看板など、
コーギーと全く同じタイプ。ただし右ハンドル。



「セット2」の2台目。「セット1」の1台目と良く似ていますが、ホイルの黄色が無くなったり、
キャンティーン・サイドのメニューの変更、アイスクリーム・コーンが側面に付くなどの違いがあります。
右ハンドル。



こうすると、「セット2」2台目/「セット1」1台目の違いが比較できると思います。
『違うセットに、以前と同じものは入れないぞ !』 という心意気でしょうか。
こんなモデルのバリエーションを作る方も作る方ですが、集める方も(我ながら)全くクレイジーです。



「セット2」の3台目。コーギーのモデルを見慣れた目には珍しい、ストライプが入ります。右ハンドル。



コーギーの「447」番、つまりオルゴールを内蔵しない方のモデルとのツーショット。全体にコーギーの方が少し平べったく、オクスフォードの方が少し背の高いプロポーションをしています。オクスフォードは意識的にコーギーが作ったのと同じタイプもモデル化しており、特にマーキング類の精緻さ・美しさには40年の技術進化を感じさせます。運転席屋根上のキャラクター看板(STOP ME AND BUY ONE)がオクスフォードでは小さくなっています。



オクスフォードのモデルと、リペアパーツのフィギュア。
でもこの画像を見て、往年のコーギー製品と間違える人も多いかもしれませんね。



さらにミニ、そしてモリス・マイナーにアイスクリーム・キャンティーンを架装したものも発売されました。

これらのモデルは、「アイスクリーム・トラック・フリーク」だけではなく、「マイナー」「ミニ」それぞれの専門コレクターにもアピールするはずで、メーカーとしてはそれがネライと思われます。



この「マイナー」「ミニ」に関しては何故か限定版で、マイナーは3000台、ミニは2000台の、それぞれ限定品であることとシリアルナンバーを付した証明書が付きます。



特に「特注」関係があるわけではなく、メーカーとして生産台数に限定を設け、証明書を付けているのです。面白い付加価値の付け方だと言えるでしょう。カタログモデルが増えすぎてしまうことを抑止する商品戦略であるとも言えます。

マーキングなどは繊細ですが、ワイパー/ミラーなどの別パーツは付けず、旧コーギー時代の風合いを残す仕上げになっています。

さらに何とも地味なオースチン&モリスJ2・バンの「ウォールズ」仕様も付け加えられました。
こちらも2000台の限定。最新リリースで、ベドフォードCAのウォールズ・アイスクリーム(こちらは配送車ではなく、販売車)も追加されています。オクスフォード・サイト上で紹介され、英国のネット・オークション上にぼつぼつ出始めたところで、まだ未入手です。


オクスフォードの1/76(OOゲージ)モデル


「オクスフォード・ダイキャスト」は、1/43のラインの他に、1/76のラインを持っていて、この1/76の小スケールでも「ウォールズ・アイスクリーム」を作っています。単品で撮影すると、1/76であることを忘れてしまうような素晴らしい仕上がりになっています。




画像では大きさの感覚がつかんでいただけないと思うので、同じオクスフォードの1/43モデルと比べてみましょう。つまり英国型の「Oゲージ」と「OOゲージ」です。

1/76は、英国では16.5mmゲージのスケールですが(米・独・仏などは1/87、日本は1/80)、英国人にとっては「トレイン・スケール」は1/87・HOではなく、1/76・OOだと言うのは、習慣的に自然な流れでしょう。ドイツ製のプラスチックのHOモデルとはまた違った、ダイキャスト・ミニカーの風合いを持たせることに成功しています。1/76ではオクスフォード以外の他メーカーも含めれば、ポリスカー、ダブルデッカー・バスなど、かなり多種類の車両を集めることができそうで、当然ながらOOゲージの鉄道用のアクセサリーや建物キットと組み合わせて楽しむこともできます。私としてはこれも大変に気になるカテゴリーです。(実は建物キットや、エアフィックス製の古い人形などをまた買い込んでしまいました。)

「オクスフォード・ダイキャスト」は1993年に、コーギーの元従業員たちによって設立された、とされます(Encyclopedia of Small-Scale Diecast Motor Vehicle Manufactures by KimmoSahakangas, DaveWeber & Mark Foster, Icongrafix 2006, p80)。「Individuals previously employed by Corgi」(コーギーによって以前に雇用されていた人たち)の「Individuals」(諸個人)が複数形になっていることからして、1人ではなく、何人かの旧コーギー関係者で設立された会社と考えられます。(同社のサイト上には、創立メンバーや「沿革」などは何も書かれていません。)

「オクスフォード・ダイキャスト」は、日本でもネットオークションでは、ちらほら出品を見かけるようになりましたし、一部の専門店が、「ミニ」のコレクターなどを対象として輸入もしているようです。ところが、ネコパブ刊『ミニチュアカー大図鑑2007-2008』では存在すら紹介されていないようです。日本未輸入ブランドを紹介することは、読者の間に混乱を起こすから、という理由からかもしれませんが、いずれにしても良質なブランドが日本で紹介されないのは、大変に残念なことと思います。

オクスフォードの1/76には、「チッパーフィールド・サーカス」のシリーズもあります。そう、旧コーギーが地道にアイテムを増やしていた、サーカス車のシリーズと同じサーカス団です。旧コーギーのサーカス車両も英米では人気の高いアイテムですが、いかんせんトレーラーなどは相当に大きなサイズになってしまうためにコレクションには二の足を踏むのですが、1/76であればコレクションにも向くでしょう。私もアイスクリーム・トラックに加えて、サブ・ラインにしても良いか、と考えつつ、既に2台だけ買ってしまいました。


旧コーギーから出たもう1台のアイスクリーム・トラック


こちらは、メットーイ・プレイクラフト(Mettoy Playcraft Ltd.)時代の旧コーギー。
453-A1で、コマー・リフリジレーター・バン。販売車ではありませんが、「ウォールズ・アイスクリーム」のマーキングを付けた、もうひとつのモデルです。
1956年8月〜1960年の生産。453-A2は、キャブとシャシがダーク・メタリック・ブルーになります。

「リフリジレーター」というのは「冷蔵庫」「冷蔵室」「冷蔵車」のことで、「フリッジ」と略したりします。ウォールズが(販売車によるセールスではなく)、ホーム・レンジの商品の、工場からスーパーマーケットへの搬送を支えたクルマということになります。

箱は青/黄色のお馴染みのデザインになる前のもので、コーギー犬の有名なトレード・マークもまだ採用されていません。これだけはリプロ箱ではなく、オリジナルで、やはり安心して手に取ることができます。ミニカー本体も可動部も何もないモデルですが、さすがに50年代の開発だけあって、いい味を出しています。



新コーギー(コーギー・クラシックス・リミテッド)も、最近になって、「モリス・Jタイプ・バン」の「ウォールズ・アイスクリーム」仕様(D983)を出しています。また、かつての「453」番を彷彿とさせる、ベドフォード・ボックス・バンのリフリジレーター・トラックでも「ウォールズ・アイスクリーム」がリバイバルされていますが、いまひとつ魅力が薄いために未入手です。どうも私の個人的判定では、新コーギーよりもオクスフォードの方に「コーギー魂」が継承されたような気がするのですが…。

今後も、オクスフォード/新コーギーなどから、ノスタルジックなアイスクリーム・トラックがまだまだ発売されることでしょう。


スポット・オン No.265 トニベル・アイスクリーム・バン
SPOT-ON by Tri-ang No.265 Tonibell Ice-cream Van
Made in Northan Ireland, 1/42 scale


アイスクリーム・トラックをコレクションして行くと、いくつかの「難物」にぶつかります。
コーギーの「447」番も、オリジナルの箱/ディスプレイ台(中箱)、2人のフィギュア/シールが揃ったものを見つけるとなると、なかなかの難物ですが、それ以上に問題なのが「スポット・オン」と「バッジー」でしょう。

保育社・カラーブックス『世界のミニカー』(中島登著・1980年初版)の巻末リストによれば、スポットオンは1960年の発売で日本に輸入されました。バッジーは1960年の発売で、一部専門店などに限定して輸入された、という扱いになっています。

ともに英国のネットオークションでも探しているコレクターが多く、状態の良いもの、なかんずく箱やミニカタログの残っているものは大変に高価になります。こういう時は、状態の良いものを見て溜息をつくのはやめて、許せる範囲の状態のものにマトを絞るのが得策と、私は考えています。



イギリスの子供が十分に遊んだあとの余韻をお楽しみください…。


スポットオンの方は、「レストアか部品取り用に」と書かれていた出品でしたが、なかなかどうしてデカールがちゃんと残っているので、入手しました。
1960年という発売時期はコーギーのミスター・ソフティー、レズニーのライオンズ・メイド(ともに1963年)より3年も早く、室内にアイスクリーム屋さんフィギュアの乗っているモデルとしては最も古いことになるでしょうか。

屋根上の剥げチョロは激しいですが、ルーフ前面/サイドのデカールが奇跡的に残っています。
想像していたよりは、ずっとダメージが少ないように思えたので、「なかなか良い状態だと信じる」と言ったら、「あんたはスゴイ(珍しい)人だ」と言われてしまいました。

剥げている部分やデカールの欠損を、丁寧にリタッチしてあげたくなりますが、せっかくなのでやめて
おきましょう。綿棒でクリーニングしていて思うことには、デカールが意外に堅牢なことです。ダイヤペットやトミカが多様した紙シールは、これに比べると遥かに脆弱で、シール糊が劣化するとボロボロと脱落することになりかねません。



商品名になっている「トニベル」というのは、これもアイスクリームのブランドで、車種はベドフォードです。

前掲書「ミスター・ソフティー・ストーリー」には、「トニベル」や「ライオンズ・メイド」など、他のアイスクリーム・ブランドの販売車の写真も収録されています。当然、「スポット・オン」や「レズニー」が作ったモデルを意識しているわけで、この本が「物好き」なコレクター向けに作られていることがわかります。

同書に掲載されている写真の実車はベドフォードCAL・ロング・ホイルベースとしていますが、「スポット・オン」のプロトタイプは、これよりもホイルベースが短いような気もします。



私は実は「スポット・オン」のモデルにはいままで全く縁がなく、このアイスクリーム・トラックが初めての対面でした。裏板に「MADE IN NORTHERN IRELAND」(北アイルランド製)のモールドがあるのを見てびっくり。「サスペンション装備」の誇らしげな表記もあります。

おそらくは後期モデルと思いますが、プラ製ベースに差し込んで固定するための、パイプ状の穴が2つある裏板を持つものもあるようです。


バッジー No.290 トニベル・アイスクリーム・バン
Budgie No.290 Tonibell Ice-cream Van


「スポット・オン」以上に「バッジー」の入手には手こずりました。
箱付きの状態の良いもので、ミニ・カタログも残っているような出品を4台ぐらい見ましたが、150〜250
ポンド、さらにそれ以上になることもあり、なかなか落札に至りません。
英国人コレクターが探している英国製品を、英国マーケットで探すというのは、実はあまり得策ではな
いのです。どうしても競争率が高くなってしまうんですね。一度は、「箱なし」と「箱付き」が出ていたにもかかわらず、よせばいいのに「箱付き」の方に執心したために、落札を逃したこともありました。



少し冷静になったところで、黄色基調の箱とミニカタログは諦め、このモデルを入手しました。塗装とデカールの状態は、「スポット・オン」よりさらに良く、私としては「十分な」(満足すべき)コンディションです。60年代初期の製品らしくインテリアは何もなく、「スポット・オン」や「コーギー」では定番になった、アイスクリーム屋さんフイギュアも乗っていません。
キャブ/キャンテイーン部を含めて、プラスチックのウインドは入っていますが、「スポット・オン」や「コーギー」のように開閉はしません。

屋根の上に載っているピンクの動物は、プードルか何かに見えますが、そうではなく、牛さん(cow)で、トニベル・アイスクリームのシンボル・キャラクターです。そう言えば、このモデルにも、「スポット・オン」の側面のデカールにも、牛さんが描かれています。
パッジーの屋根上の牛さんは、脱落しやすいパーツだったらしく、リペア・パーツが別売りされています。このモデルの牛さんもリペアパーツで、オリジナルではありません。



裏板の一部がブロック上に突き出していて、ソフトクリーム製造機に見立てられている、という素朴なツクリです。(トニベルも、ソフトクリーム系のアイスクリーム・ブランドなのです。)
裏板は車名もブランド名も何も書かれていない「のっぺらぼう」です。




念願かなった「スポット・オン」と「バッジー」のツーショット。少しばかり状態が疲弊していますが、止むを得ません。「スポット・オン」の方は、もう少し状態の良いものが出たら、ねらうこともあるかもしれませんが、でも箱があると100ポンドを覚悟することになります。そのうち、誰かがリプロ箱を作ってくれるといいんですけどね。(スポット・オン後期のパッケージは、窓開き方式の現代的なものだったようです。)

考えてみれば、往年のディンキーはアイスクリーム・トラックを作っていません。
「ウォールズ」=コーギー&レズニー、「トニベル」=スポット・オン&バッジー、「ライオンズ・メイド」=レズニー、「ミスター・ソフティー」=コーギーというように、アイスクリーム・ブランドの版権を、みんな他メーカーに取られてしまったからかもしれませんね。


バッジー No.290 の状態の良いものを入手!


バッジー No.290 トニベル・アイスクリーム・バン」の状態の良いものを入手することは、なかなかに困難なことをお話ししたのですが、全く「ひょんな」ことから、箱付きのモデルを手にすることが出来ました。実は交換トレードで入手したものなのです。既にこのモデルの捜索活動は打ち切っていましたので、思いがけないことでした。



ミニカーの状態が良いことはともあれ、何と言ってもこの「箱」が魅力的です。裏側には「アイスクリーム・バン」の詳細な解説入り。




それにしても、ディンキー/コーギー/レズニー/バッジーと、どうしてこの時代のミニカーの箱は黄色なのでしょうか。



以前から持っていたモデル(左側)の屋根上の牛さんが「プードル」のようだと書いたのですが、これがリプロ・パーツであるためと判明しました。オリジナルの牛さんはプラスチック製で、極めてシャープなモールドです。リプロ・パーツが「オリジナルを忠実に復元している」ことを前提にすることの危険を認識させられます。デカールは黄変はしているものの、なかなか堅牢です。


オクスフォードの作った「トニベル」


オクスフォード・ダイキャストは、水色/クリームの「ウォールズ」仕様に加えて、水色1色の「トニベ
ル」仕様も作っているので、同じカラーリングの「スポット・オン」「バッジー」と並べることができます。

「トニベル」ブランドは現在でも健在のようですが、オクスフォードの作ったモデルは、明らかに「スポット・オン」と「バッジー」のミニカーを意識しての選択です。「牛さん」のキャラクター・シンボルが同じでしょう?




オクスフォードの「トニベル」には、車体全体がピンクのものもあります。これは、「トニベル」が、スカイブルーとローズピンクの両方を、シンボルカラーとして使っていることに由来するようです。
ピンクのアイスクリーム・トラックは、60年代のコーギーを出自とする私の趣味には合致しないので、買わないことにしています。アイスクリーム・トラックはブルーとクリームであるべきなのです!


レズニーの作ったアイスクリーム・トラック
Lesney Matchbox 47B Commer Ice Cream Canteen

ミニカー史全体から見れば、誠に微々たるジャンルを構成するに過ぎない「アイスクリーム・トラック」ですが、近年の「オクスフォード・ダイキャスト」の参入などもあって、いざ集めるとなると馬鹿にできない種類になります。加えて、スポット・オン、バッジーなど往年のブランドの作った難物も多いのです。

コーギーが「ウォールズ」と「ミスターソフティ」、スポット・オン/バッジーが「トニベル」を作ったこともあり、レズニー・マッチボックスは「ライオンズ・メイド」をブランドに選びました。おそらく背景には、アイスクリーム・ブランド同士の熾烈な宣伝合戦があったものと想像できます。「子供のうちからブランドとの接点を持たせる」のが、ブランド戦略の「常道」とされるのです。



レギュラー・ホイル時代の「47B」、製品名は「コマー・アイスクリーム・モバイル・ショップ」で、初出は1963年。キャンティーン内にアイスクリーム・マンの人形が入った佇まいがコーギーのモデルに非常に良く似ているので、コーギーの「ミスターソフティー」の影響を受けているのかと思っていましたが、コーギーの発売が1963年3月、マッチボックスも1963年で、どちらが先か特定は出来ませんでした。
いずれにしても、製品の企画開発には一定の期間が必要ですから、どちらも並行して開発されていたと考えるのが順当でしょう。

最も初期生産分である「47B-1」は、フロント屋根上のデカールが矩形(スクウェア)で、サイドのデカールは3本のストライプになっており、グレイ・ホイル(プラスチック)を履きます。実はこのグレイホイルも、アイスクリーム・トラック・モデル中の「難物」のひとつで、私としてはこれも「箱なし・そこそこ状態」のもので満足することになります。



「47B-2」は、デカールは「47B-1」と同一(フロント屋根上スクウェア/サイド3本のストライプ)のまま、ホイルが黒になりました。



「47B-3」は、屋根上デカールが卵型(オーバル)になり、サイドのデカールもストライプがなくなります。



「47B-4」は、ボディ色が濃い目のメタリック・ブルーになり、デカールは屋根上・スクウェア、サイド・ストライプドに戻されました。最初期の「47B-1」に次いでレアなバリエーションとされます。



「47B-6」は、ボディがクリームになり、屋根上・オーバル、サイド・プレイン(ストライプなし)の最終タイプ。クリームで屋根上・スクウェア、サイド・ストライプドのものもあり、これは「47B-5」になります。



初期「グレイホイル」のモデルが入って来た「リプロ箱」。

結局私は、マッチボックス47Bのオリジナル箱はひとつも持っていませんが、箱のイラストレーションが青ボディのものも、クリーム・ボディのものもあるようで、後から別の箱をあてがったような商品に気をつける必要がありそうです。例のリプロ箱CD-ROMには、マッチボックスの47Bは含まれていませんでした。イギリスではマッチボックスのリプロ箱は全くと言って良いほど出品されず、見かけるものはこのようにモデルと一緒に売られています。ドイツ人がリプロ箱のみ2種を出していたので、ユーロ札を郵送したら売ってくれるか、というメールを打ったのですが、結局返事をもらえませんでした。



マッチボックスのカタログ上に見る、47B「アイスクリーム・モバイル・ショップ」の変遷で、上左1963年(インターナショナル第2版)、上右1966年(アメリカ版)、下左1968年(アメリカ版)、下右1967年(アメリカ版)。「55セント」の表記があるのは、アメリカ市場版であるためです。この当時1USドルは360円の固定レートでした(1971年8月まで)。

イラストレーションは実際のモデルのバリエーションを正確に描いていますが、バリエーションの出現年次とカタログ年次順とは、必ずしも一致していないようで、1967年でいったんクリームになったボディカラーが、1968年版でどうした再びブルーに戻ったのかは、理解に苦しみます。
1969年版では、「47」番は「DAFチッパー・コンテナ・トラック」に差し替えられ、アイスクリーム・モバイル・ショップは絶版になりました。

(カタログ画像は、「ねこざかな」さんのご提供素材を加工したものです。いつもありがとうございます。)



レズニーのカタログの1963年版では、スケールを明記しており、大変に貴重な情報となります。
47Bの「コマー・モバイル・ショップ」では、「1/75・OOスケール」となっているので、オクスフォード・ダイキャストの1/76モデルと並べてみました。レズニーの車内にいる、アイスクリーム・マンが、上半身だけの「巨人」であるのが笑えます。(この巨人は、コーギーのように可動しません。)

レズニーはこの他に、メジャーパック(M-2-A2)で「ウォールズ」のフリッジ(冷蔵)トレーラー(ベドフォード)を作っています。


オクスフォードの作った「ライオンズ・メイド」


オクスフォード・ダイキャストは、「ウォールズ」「トニベル」に加えて、レズニーのモデル化した「ライオンズ・メイド」仕様もちゃんと作りました。モリス・マイナーとミニが作られています。

キャンティーン部分は、「アングリア」に乗っているものと共通パーツかと思うとそうではなく、「アングリア」「モリス・マイナー」「ミニ」で、全て形状が異なっています。




ご紹介した以外にも、アメリカではホットホィールやブリキ玩具にもアイスクリーム・トラックがありますが、今のところコレクション対象からは除外しています。
イギリスではハンドメイドに近い少量生産品や、カスタム作品(いわゆるCODE3)も見られます。
ブレキーナなどのドイツ製品にもアイスクリーム・バンやトラックがあります。ドイツ語ではアイスを「Eis」とつづり、「氷」だけでなく「アイスクリーム」そのものを意味します。


ところで、銀座4丁目9-2・畜産会館1Fの「クレムリ」のソフトクリームは、乳脂肪分のコクを感じさせて大変に美味です。銀座においでの際は、ぜひご賞味ください。それとマクドナルドでは、カップ入りソフトクリームにフルーツ・ソースをかけた「マンゴーサンデー」「ストロベリーサンデー」を楽しめます。午後2時以降、これが100円で食べられた時期があったのですが、残念ながらキャンペーンは終わってしまいました。何のことはない、結局私はアイスクリーム・トラック以前にアイスクリームそのものが好きなようです。

アイスクリームが甘過ぎてイヤだ、という方は、「ビール・トラック」や「ツール・ド・フランス」「サーカス・トラック」「TV中継車」など、ご自分の「趣味力」と想像力をはたらかせて、オリジナル性の高いサブ・テーマを見つけてみてください。決してレーシングカー/ラリーカーだけがミニカーではないですよ。


※銀座「クレムリ」は、2008年1月末に行ったところ、突然閉店していました。ショック !
※マクドナルドの「サンデー」メニューは、同じく2008年1月末時点では「ストロベリー」と「チョコレート」 
 に変更されました。





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