ニチモ1/22「トヨタ・パトロールカー」






念願かなって入手。それなりに遊べそうです。


アリイ1/32改造の「トヨタパトロールFS20」のところなどで何回か話に出したことのあるニチモ1/22の「トヨタ・パトロールカー」のキットですが、気分転換の意味もあって入手してみました。

『モデル・カーズ』2001年3月号(No.58)、「国産高級車が高級だった頃」34ページに、このキットが完成品ともども紹介されていますが、キットの発売年次は明記されていないようです。一方モデルアート社刊・『モデルス プラスチック'60』66ページにも本キットの紹介記事があり、その中では「'62年当時」という記述があります。当時価格はモーター・電池別350円とのこと。大体大盛屋チェリカ・フェニックスと同程度の価格です。(どうやらこの2誌に掲載されている完成モデルは、クラウンRS21への改造作品を含めて同じもののようです。)

パッケージや説明書のどこかに、発売年次を示唆する情報があるのではないか、と思ったものの、著作権表示などなかった時代の製品で、どこにも何も書いていないのですね。
モデル化しているのはトヨタパトロールFS20・1959/1960ですが、キットに同梱されている「道路標識原色一覧表」に掲載されている標識が、昭和38年3月に抜本改正された以降のものであるため、一応発売年次は「1963年3月以降」と考えたいと思います。もちろん、62年に発売されていて、この時には「一覧表」はついていなかった、または昭和25年3月制定の旧標識だった、という可能性はないではありません。

発売から43年を経ているこのキット、オークションなどで不思議と良くみかけるのですね。未組み立てのキットの状態で結構な数が残っているようです。よほど生産数が多かったのか(?)、当時としては豪華キットということで作らずに保存した方が多かったのか(?)、どこかで大量のデッドストックでも発見されたのか(?)、その理由は定かではありません。
作りもしないキットの袋をバリバリと破ってしまう私などから考えれば、こんな古いキットがこんなにたくさん残っているなど、全く「想定外」のことです。
私はこのキットを作ってしまうつもりで買ったので、結局キット状態で保存されるものは、また1つ減ることになります。

まず未組み立てのキットの状態を、資料的な意味も含めてご覧いただき、完成モデルのご紹介はまた後日、ということになります。これからも未組み立てキットの状態で保存されようという方、どうか私の分まで大切に保存して、後世に伝えていただきますように…。



A real vintage constuction kit,Toyota Patrol FS20 from Nichimo in early 1960s

Nichimo is one of famous farm in Japan for making construction kits.They originated as "Japan Model Aircraft Manufacturing" (Nippon Mokei Kokuki Kogyo) in 1951, and tried to develop and provide a lot of innovative products in the early years of Japanese construction kits which were made by plastic.

I could find a real vintage kit of Toyota Patrol FS20 1959/1960 which had been sold since 1963.
It was molded by plastic in three colors with tin-pressed patrs and was motorlized with battery and red flash light on its roof. In addition, you might be surprised that it had a mechanism for automatic steering with several kind of plastic "cam"s.
Please enjoy a Japanese veteran kit in near mint condition in the early years before establishing Tamiya quality .

"Nichimo" is a brand name and trade mark of Nippon Mokei.


ボックスアート
注目されるのは商品名が「警視庁パトロールカー」である、ということです。
上記2誌に「クラウン・デラックスRS21への改造」という作例が載っていることで明らかなように、ニチモは同スケールの「トヨペット・クラウン」は発売しませんでした。

つまりありがちな、「クラウン」を白黒パトカーの商品に転用したのではなくて、このキットははじめから「パトロールカー」としてしか設計されていないのです!!

もうひとつ、「プラスチックカラーモデル」という表現にご注目ください。これは現代語に翻訳しますと、「塗装をしなくても、そこそこリアルなモデルが出来上がりますよ」ということを言っているのです。
具体的には、「白」部分と「黒」部分が別パーツになっているため、塗り分け作業をする必要がありません。塗料や塗装の道具が今ほど普及していなかったこと、プラモデル以前からのソリッドモデラーのような方は別として、みんな塗装がそれほど上手くなかったために、高級プラモデルは塗装する必要のない「多色成型」が「常識」だったのです。レベルやエアフィックスなど、白やグレーの1色モールドのキットは逆にカルチュア・ショックでした。

ボックスアートは、今は無き小松崎茂画伯の作品です。この頃、『少年サンデー』などには漫画ページ以外にも「口絵」だの「読み物」だののページが結構あって、小松崎作品の「戦艦大和」の絵、なんていうのをよく見ていたものです。SFものとか、戦記ものとかが多い小松崎作品としては、街中を走るパトカーなどというのは、案外珍しいテーマかもしれません。



場所は都電・数寄屋橋、現在のソニービル前

この絵、右に「SONY」の看板が見えていますが、現在のソニービル前なんですね。
左が不二家、警視22号は、外堀通りを新橋方から、鍛治橋・八重洲方に向かって走っています。画面奥が銀座四丁目交差点で、左に和光の時計台の文字板が点灯してます。

丁度パトカーの屋根の上あたりに、「森永チョコレート」と書いた丸い看板がありますが、これぞ「銀座の地球儀」と言われ、森永製菓が昭和28(1953)年4月11日に、「不二越ビル」の9階屋上に作ったものです。直径11メートル、高さ12メートル、昭和58(1983)年1月に解体されました。30年もあったんですね。(下の写真は『都電の消えた街《下町編》』諸河久・写真/林順信・文/大正出版1993年、25ページのもの。これは丁度逆に晴海通りを四丁目側から数寄屋橋を見ています。撮影は昭和38(1963)年9月で、ニチモのキットとほぼ同時期。)



小松崎パッケージには五輪マークと「1964」の文字も見えていますから、たぶん「東京オリンピックまであと○○日」のサインだったでしょうか。これも「1962-3年発売」という情報と一致しています。

小松崎パッケージでソニー看板の下の垂れ幕にある「レッツゴー物語」は、坂本九ちゃんがカバーした曲で、「ウエストサイド物語」で人気絶頂だったジョージ・チャキリス主演の同名映画の主題歌。ただし映画の原題は「チェンジ・オブ・ハート」で、例によって邦題を付ける時に「ウエストサイド」を意識しすぎたために「物語」になってしまった、というものです。

ということで、小松崎作品はめちゃめちゃ正確に、昭和38年頃の銀座を描いている、というわけなのです。

一方パトカーに目を転じると、サイドモールがリアにかけて山形に一段高くなっていく様子や、8ナンバーのプレートなどは、FS20の資料を見て描かれていることをうかがわせます。
ただしフロントのエンブレムが「TOYOPET」になっていることに加え(トヨタパトロールFS20であれば「TOYOTA」になります)、サイドのエンブレムは「Toyopet Patrol」になってしまいました。小松崎画伯にして、クラウンとトヨタパトロールの概観を混同しても無理もないか…。
それともアシスタントがクラウンのカタログでも渡してしまったか…。

組み立て説明図(上半分)


インストラクションはかなり大判(約40×55cm)で、キットそのものの「豪華さ」のシンボルともなっているようです。誇らしげに「トヨタ」のマークが入っているとか、半端ながら1/22のスケールが明示されているとか、「PAT.AP自動操縦装置」「カラーモデル」のキャッチフレーズなど、後のタミヤの1/12シリーズぐらいの豪華さがあったような気がします。

(1/22というスケールについて言えば、アメリカ車の1/24-1/25は小ぶりな日本車としては1/22ぐらいで同じようなボリュームになるからか、とも思いますし、モーターライズの電池の大きさなどから逆算されたサイズかもしれません。)

注目するべきは、商品名(つまりモデル化している対象)は「トヨタ パトロールカー」なのであって、「トヨペット」とか「クラウン」とかはひとことも書いていない点でしょう。

組み立て説明図としては、冒頭に全体の分解図的なパーツ構成図があり、子供たちは、下に詳述してある手順の説明などロクに読みもしないで、この冒頭の図だけを頼りに作ったものです。モノグラムなどもこの方式でした。
手順説明の部分は漢字がわからないとか、万一レベル/モノグラムなどを入手すると、英語が読めませんでしたので…。(何と言う飛行機やクルマなのかもわからずに作ってました。)



組み立て説明図(下半分)

組み立ての手順を詳述した部分。モーターライズ機構、特にニチモの誇りとした「AP自動操縦装置」を完動させるためには、このあたりを良く読んで、調整する必要があったでしょう。

モーターライズものを当時の子供が作るにはもうひとつ大きな問題がありまして、接点部分をハンダ付けする必要があったのですね。リード線を剥いて、接点部品にネジリ付けておくだけでは、そもそも電流が流れていないとか、走っているうちの振動で接触不良を起こすとかで、ちゃんと作っても、ちゃんと走りませんでした。
「コレはハンダ付けしないと作れないから」なんて、模型屋のオヤジにイヤミを言われるとか、親が買ってくれない口実にもされたものです。

「製造元 日本模型株式会社」が何とも誇らしげで良いです。



ボックス内に入っているカード

今はプラキットの箱の中にこんなモノを入れる習慣はなくなりましたので、このカードだけでも十分に時代感があります。なんかもう「ノスタルジック」を超えちゃってますね。
私が最初に作ったプラモデルも、たぶんニチモの100円の零戦でした。

側面のエンブレムは、今度は「Toyopet Crown」と書いてあります。
おそらく写真から起こしてイラストレーションにしたものの、サイドのエンブレムがツブれて読めないためにレタッチしたんでしょう。全く余計なことをしたものです。
言うまでもありませんが、FS20であればここは「Toyota Patrol」になります。
パーツ構成をチェック


豪華絢爛たる金属部品群

実は私、何を隠そう子供の頃に、このキットを作ったことがあるのですね。ところがその時の記憶では、まさかグリル/バンパー/モール類が金属(ティンプレート、ブリキ板をプレスしたもの)だったとは全く思っていませんでした。確かにプラ部品の真空蒸着メッキなんてまだなかった頃のようなので、非常にユニークかつ的確な処理だと思われます。
(当時でもレベルなどのアメリカ製品にはメッキ部品の入ったものがあったような気がしますし、もう少し時期が下ると、コグレのクラシックカーなんかにはメッキ部品が入るようになりました。)

もうひとつ、これは穿った見方ですが、プラスチックモデルが普及していくということは、従来のブリキの自動車を作っていたメーカーや工場を圧迫していたと思うのですね。マルサンがブリキからプラモデルに、アサヒ玩具がダイキャストミニカーに転換したぐらいですから。それで、ブリキ系の工場に協力してもらうことで共存共栄をはかる、といった意味もあったのではないか、などと想像します。

一部に若干のサビは出ていますが、40年の歳月をくぐったにしては大変に綺麗な状態で、メッキが光り輝いていることに驚きます。メッキの品質が高いのでしょうか。下のギヤボックス部分に「PAT.AP自動操縦装置」が組み込まれていて、長いブームを経由して前輪の自動ステアリング機構と連動するようになっています。
グリルに警察エンブレムが付いていることに驚愕。



白プラスチック成型のランナーと、シート部品

わざわざボディ上面と屋根部分が分けられています。左上に円形や、丁度エンジンの冷却ファンのような形をしたパーツがありますが、これが「自動操縦装置」のキモになっている「カム」のパーツです。カムの外形がトレースされることで、それと連動して前輪がステアし、走りながら「自動」的にクルマの方向が変わるという仕掛け。カムの外形によって走行パターンが変わるわけです。究極の「アナログ・オートマチック」と言えるでしょうか。当時は「自動」と言っても当然機械的に自動なわけで、デジタルで自動なんて想像もしませんでした。例外はエイトマンの「人工頭脳」ぐらいでしょうか。

シートは当然「上げ底」です。なにしろシート下には単2電池が2本も入るんですから。
シートの色は妙な緑色で、大盛屋・チェリカフェニックスのベロベロのセルロイドのシートの色を彷彿とさせます。当時はシートなんて付いていないようなモデルもあったので、「シートが付いているぞ!!」ということを自己主張するために、こういう色になっているのかもしれません。黒では目立ちませんから。
モーターサイレンのパーツがランナーから取れていますが、箱の底から出てきました。



黒プラスチック成型のランナー

白と黒がパーツが分けられているおかげで、誰にでも、子供にでも、「塗り分け」だの「マスキング」だのと言わなくても、白黒のパトカーがキレイに仕上げられる、というわけなのです。車体前面の「ヒゲ」塗装部分はデカールが付属しているので、つまり塗装の必要はありません。そもそも、白の塗料を、ムラなくキレイに塗れる子供なんて、いませんでした。
結構すぐれたコンセプトだと思いませんか?? 皆さん、もう「塗装面の研ぎ出し」なんてしないことを社会のルールにしましょう。

そもそも「スライド金型」などというものがなかった時代なので、抜け勾配に逆らって、スソのすぼまったボディを一発で上に抜けないために、こういう処理をすることが必然でもあったのです。「1951年シボレー」の時に使ったリンドバーグのキットをはじめ、当時はこういう「ボディ・バラバラ・キット」ばかりでした。単2用の電池ボックスが巨大。



袋入り部品

モーターライズ関係の接点部品など。
タイヤはホイル/ホワイトリボンともども組み立て済み。ホイルキャップのパターンがFS20として正確なのに驚かされます。接点部品はプラにハトメで組み付け済みで、まぁ親切というか、モーターライズ機構の動作をより確実にするための処理なのでしょう。
ヘッドランプやテールランプ、テールランプのフレームなど、なかなかパーツのクォリティは高い!!
小さな虫ピンが入っており、アンテナに使え、ということなのでしょうが、現在の玩具の安全基準から言えばこれも全く「想定外」のことです。

ここでも意外に金属にサビは出ていません。
小さなハトメがどうやら1つなくなっているようでが、しかし逆に言えばここまでパーツが残っていたのも奇跡かもしれません。袋にも箱にも穴があいていましたから。
当時は工場出荷時から部品が欠品している、などということが日常茶飯事で、飛行機の胴体の右側が2つ入っていたりしました。さすがにこれはどうにもならず、模型屋に駆け込むわけです。後にタミヤが袋ごとに「検」印を入れるようになり、感動したのを覚えています。

赤色灯はまさか点灯はしないでしょう。モーターサイレンは本来この袋の中のパーツではなく、白のランナーからはずれたもの。
感涙だったのは「アドハチック」という名前の接着剤。もう数十年忘れていた商品名でした。



デカール

かなり悲惨な状態のデカール。当時は「転写マーク」と言い、「デカール」なんていう言葉はかなり後になって模型雑誌が流行らせたものです。私など、はじめはどうしたらいいのかわからず、台紙ごとハサミで切ってセメダインで貼ってました。

俗に「黄変」とは言いますが、フィルムの余白部分が本当に黄色になっている…。台紙ははっきり言ってカビています。もしこれを水に入れるとどうなるか? 全く台紙から浮いて来ないか、逆に木っ端微塵になるかどちらかで、デカールとしての使用は断念せざるを得ません。

しかし!! エンブレムは「Toyota Patrol」になっている!!
やっぱりわかってくれている人はいたのです。
8ナンバーのプレートと言い、実車を取材して模型化していることは明らかです。
ボンネット前の「TOYOTA」エンブレムがモールドにもパーツも無いな、と思っていたら、デカールで正確に再現されていました。



組み立て説明書とは別に入っている、『道路標識原色一覧表』。パトカーのキットだ、という雰囲気を盛り上げます。
冒頭で書いたように、これは昭和38年3月に抜本改正された以降の標識。これも「東京オリンピック」対応のひとつで、標識をある程度グローバルスタンダードに合わせる必要に迫られてのことと思われます。

「モデルペット」が道路標識のセットを製品化していますが、1960年1月と1961年3月に発売されたセットは昭和25年3月の道路標識令改正以降のタイプで、進駐軍対応のためほぼ全ての標識が英語併記のものでした。

モデルペットは1963(昭和38)年3月の新標識制定直後の5月には新セット(2種類)を早々に発売しています。モデルペットも、ニチモも、子供たちに新標識を覚えてもらおう、という使命感を持っていたのでしょう。



標識一覧の右側は、『パトロールカーのお話』『自動操縦カムの取りつけ方』
そして何と!! トヨタ・パトロールカーの主要諸元!!

型式を「トヨタFS20型59年60年」と明記し、燃料タンク容量まで書いています。もしかして我が国のプラモデル界は、40年前の方が真摯だったのでは…と勘ぐりたくなります。

トヨタ パトロールカー仕様
全長×全巾×全高 4,485×1,695×1,540mm
車両重量    1,630kg
車両総重量   1,960kg
乗車定員    6名
車名及型式   トヨタFS20型59年60年
最高速度    150km/h
登坂能力    0.39
最小回転半径 5.5m
エンジン型式  F直列6気筒
内径×行程   90×101.6
総排気量    3,878cc
最高出力    110HP/3400
燃料タンク   47リットル

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