ニチモ1/22「トヨタ・パトロールカー」(完成篇)






いよいよ制作開始


さて、製作記および完成モデル公開篇です。
完成モデルが写っているのに、なんで金属部品がもう1セットあるのかって?
とても親切な出品者さんが、「部品取り」されて完品でなくなったキットの中から、余分の金属パーツをオマケに付けてくれたからなのです。

いざ作り始めてみると、キットの状態ではわからなかったこと、想像できなかったことがたくさんあります。やっぱり手と脳はつながっているらしいので、自分で手を動かしてみないことには何も見えて来ない、ということなのでしょうか。よく会議で、他人の作って来た資料を見て文句だけ言う人がいますが、「だったら、たまには自分で何か作ってみんしゃい」と言いたいです。

まず激しい離型剤。「離型剤」なんて、もちろん後に模型雑誌を読んではじめて知ることになるわけですが、昭和38年頃から「離型剤」はついていたんですね。
それも40年も経っているのに(今年は昭和80年)、なんかヌルヌルしていて、いっこうに衰えていないことが恐ろしいです。
加えて金型に少々「荒れ」があるのですね。バリはそれほどではないのですが、本来平面であるはずの部分にブツブツがあったりします。
製品の発売は昭和38年であるとしても、このキット現物が発売当初のものとは限りませんから、入手したキットは、数年間生産を続けて多少金型が荒れた状態のものなのかもしれません。

それとプラスチックの素材について。
ひところ、「ニチモのプラスチックは他社のものより硬い」ということが、模型誌などで書かれていたのを覚えており、実感としてもなんとなくそれはわかるのですね。
しかし少なくともこの「パトロール」のキットについてはそんなことはなく、むしろ現在のものより柔らかく感じます。私はプラスチックを見てたちどころに素材の素性がわかるような知識は持ち合わせていませんが(ポリスチレンとかポリプロピレンとか)、モーターライズ走行モデルとしての強度や耐衝撃性などを考えて、多少柔らかい(弾性のある)素材を使っているのか、などとも考えました。離型剤の量といい、塗装をしてちゃんと塗料が載ってくれるだろうか、という点には不安が残ります。接着剤は通常のもので利用可。昭和38年当時には既に「マルサン・プラボンド」という液体接着剤が別売りされていました。(かつて東ドイツかどこかのキットで、「通常の接着剤が全く効かない!!」というオソロシイものがありましたっけ。)

プラ模型を完成させて何年(というか数十年)も経つと、素材自体がモロくなってパリパリになることがありますが、あれはプラを溶かすタイプの接着剤を使った部分がモロくなることと、長時間紫外線に晒された影響によるようです。少なくともこのキットのパーツについては、そういった意味での劣化は全く見られませんでした。

このキットには「シャシ」のパーツが無い!!


箱を開けてパーツ割りを見た時から、ボディが「黒」部分と「白」部分に分かれているのはわかっていたのですが、少なくとも「シャシ」(車台・裏板)の上にボディが乗っかるのだと思い込んでいたのですね。ところがそれらしい大きなパーツは見当たりません。

組み始めて驚くことに、電池ボックスをボディ「黒」部分の左右前後ではさみ、それが「フレーム」になるようになっているのでした。「スライド金型がなかった」ということは前に書きましたが、したがって一発で「抜け勾配」を抜くことのできる、平面に近いパーツを組み合わせて「立体」を作っていくことが基本になっているわけです。
加えてボディ「黒」部分の左右前後部品の接着にあたっては、「ガイド」も「ピン」も何もありません。ヤスリで努めて平面を出しておいてから接着するわけですが、車体の基本フレームとなるだけに歪みは避けたい上、かなりの強度も必要となるわけで、「瞬間接着剤」などというモノがなかった時代に「アドハチック」(チューブ入り接着剤)だけでこれを組めというのは、ほとんど無謀とも言える要求です。
全般にパーツ同士が干渉していて収まらない、なんていう部分が各所にあり、正直言って子供が作るには、なかなかしんどいキットだったかもしれません。まぁ、子供は逆さまにでも何でも接着してしまうので、「しんどい」と思うのは結局コチラが年をとったせいか…。

ちなみに瞬間接着剤「アロンアルファ」は、当初は外科手術用とか(つまり縫合しなくて良い)、釣りのエサの固定などに使われていたものが模型雑誌(確かホビージャパン)で紹介され、複葉機の張り線接着に良い、という話になったのですね。1970年代の前半だったでしょうか。ところがこれは代々木の「ポストホビー」にしか売っていなくて、「アロンアルファ」を買うことを主目的に、「ポストホビー」まで行ったのを覚えています。値段も現在よりもかなり割高だったのではないでしょうか。高いお金で買って来て、入っているのはエラく少量で、おまけにノズルを固まらせてしまったりして泣いたものです。普通の文具店で「アロンアルファ」を見た時には感動しました。



ボディ「白」部分も、車体上半分と、ピラー/ルーフ部分に分割されています。
ひょっとしてルーフ部分をはずして電池交換するのか?? とも思いましたが、電池交換は車体裏側にフタが付いていました。これもボディパーツが一発で抜けなかったための処理でしょう。

「モーターライズのキットには子供には困難なハンダ付けが必要」ということを以前に書きましたが、このキットはそれに対する明確な対策コンセプトが見られます。
すなわちリード線を極力使わずに、接点金具で電流を導こうとしていること、モーターや電球のリード線についてはビスでネジ込ませるとか、接点金具を折り曲げてホールドさせるといった設計になっているのです。つまりハンダ付けは不要です。
画像で見えている長い金属板は、電池ボックスの電極からスイッチに電流を導くためのもの。
モーター一方はなんと金属のギアボックス全体を経由して電流が流すようになっています。



モーターも「時代もの」

TKKマブチモーターNo.15。
キットは、「No.15」「No.25」のどちらでも使用可、とありますが、「No.25」は入手できず、「No.15」を入れます。
このモーターの箱だけで十分「ノスタルジック」です。私が知っている時代には(このニチモ製「パトロール」の時期も含めて)、マブチモーターは外側がブルーで塗られていたのを覚えています。確か「No.13」か何かだけがオレンジ色でした。
この外側無塗装のタイプは、おそらくその後の製品なのでしょう。マブチモーターに「ピニオンギヤ」が付くようになった、という広告が『少年サンデー』か何かに出ていたのを覚えています。

「マブチモーター」は、昭和38年頃はまだ社名が「東京科学株式会社」でした。「TKKマブチモーター」の「TKK」というのは「東京科学株式会社」のことです。昭和38年というと、スロット・レーシングカー用の「FT」モーターが出た頃です。その後この会社は、プリンタ/VTR/CD/MD/DVD/カーミラー/自動販売機/ノートパソコン用などの小型モーター技術で大発展を遂げたのはご存知の通り。

ボディは無塗装で仕上げてみることに


最初はボディぐらい普通に塗るつもりだったのですが、「離型剤とプラ素材の関係で塗料が載るかどうか心配」という例の一件もあり、いっそ無塗装で残すことにしました。
その代わり、コンパウンドで磨いてツヤを出します。
シートだけはさすがに妙な「グリーン」が不気味なので、黒で塗ります。ルーフの内側も黒で塗っておきます。

このキットはもともと、屋根上の点滅灯用の赤の麦球がパーツとして含まれており、点灯可能になっています。ヘッドランプについても、キットにこそ麦球は含まれていないものの、点灯可能なパーツ構成になっています。
それで麦球を3個セットし、モーターとは別回路で点灯できるようにしました。(レッドビーコンも点滅はしません。点滅すると、かえって画像を撮る時に不便ですし、もう余分な回路を仕込むスペースもありませんので…。)
モーターと別回路にするのは、点灯するたびにモーターもガーガーと回ってしまい、点灯中の画像を撮影することができなくなるのを避けるためです。

円錐型の電球ケースのパーツが用意されているので、内側にアルミテープを貼り、反射鏡代わりにします。
キットでは屋根上のレッドビーコンからのリード線が垂直に室内を縦断しますが、いかに「上げ底インテリア」とは言えこれはイヤなので、ピラーのあるところまで引っ張って来てから、目立たないようにボディ内に入れました。
インパネは出鱈目ではなく、少なくとも「クラウン」のレイアウトを再現しているようです。
この時期に「タブルミラー」があったかどうかは定かではありませんが、室内にタブルミラーを付けてみました。



モーターによる駆動系統を入れる前に、ヘッドランプ/屋根上灯の配線を済ませます。

キットに付属の赤の麦球は、手に持っただけでリード線がはずれてしまいました。それで確認することはできなかったのですが、たぶん自動点滅球(点灯時の熱で電球内の金属片が膨張して曲がり、一定の間隔で電流が断続するアナログ点滅球)ではなく、点灯しっぱなしの電球だったはずです。
当然モーターの回路とつながっていますから、走行中だけ点灯する設計です。
そういえぱ、タミヤの初代パンサーの砲身先端にも赤い豆球が付いていましたっけ。



追加したライト点滅系(車体後部に見えているスイッチ)とモーター駆動系が入って、「昭和30年代メカ」満載。「単2電池2本」はスゴい重量感。「タミヤの1/12シリーズに匹敵する豪華さ」という意味がわかっていただけるでしょうか。ギヤボックス中央にある白いパーツが「自動操縦装置」用のカムで、このカムの外形をすぐ上の金属性のピンがトレースし、長いシャフトを通じて前輪のステアリング機構を動かすわけです。

ボディ用のティンプレート部品に比べて、ギアボックス/シャフト/ビスなどには錆びが目立ちました。一度分解して錆びを落とし、プライマーでも塗っておけば良いのでしょうが、40年経ってこの程度だったのですから、まだしばらくはいいでしょう。どうせ今から40年後には私はもう生きていないでしょうから。

電池もこの時代の外側が紙製のものが欲しいところですが、昔の電池はすぐ液漏れを起こしたので、状態のいいものを見つけるのはむずかしいでしょう。
電池ボックスにはこの上に黒プラスチックのカバーが付きます。

やっぱりパーツ数が少ないのですぐ出来てしまう


フロントとリアのウインドウ(ティンプレートのフレームに薄いブルーの塩ビフィルム)とボディとの合いはメチャメチャに悪いです。フロントはなんとかボディ側を削り込んで大きなスキマはなくしましたが、リアはこれが限界。

ティンプレート部品は一部には錆びが出ていますが、全く綺麗な部分の方が多く、よく40年の風雪に耐えたものと思います。錆びはヤスリで落とし、全体に透明プライマーを塗っておきます。

ボディ後部両側面に付くパネルはFS20では付かないので、最上部をモールとして残し、全体を黒で塗ります。トランク後面のパーツを含めて、「クラウン」との混同が若干見られるようです。



こういうキットを作るにあたって、「プロポーションの修正」「室内のシートを自作」なんていうのはむしろ「邪道」で、ストレートに組んでみればいいんだと思います。
「モーターライズ」と「特許・自動操縦装置」が売り物だったのですから、当然モーターも入れて作るべきでしょう。

付加したのはランプ類の独立点灯回路と、室内のダブルミラー、それにワイパー/フェンダーミラー/フロントのフォグとスモールのライトレンズを付加してみました。ライトレンズの裏にはアルミテープを貼ります。
フォグランプはティンプレート部品でもグリル一体で再現されているのですが、これを付け加えるだけで随分とFS20らしくなるから不思議なものです。
ちょっとアンテナが長かったかも。「1965年渋谷銃砲店事件」でのFS20の写真と比べるに、ルーフ上のアンテナ基部の位置などはなかなか正確。

ヘッドランプ上の「まぶた」状の張り出しが、FS20にしては不足していると思うものの、かえっ「BH/FH26」トヨタパトロールの面影を感じて、なかなか重厚な面構えです。



ギアボックスに付けたプラスチック製の「カム」の形状の加減で、ステアリングを大きく左に切ったところ。
ステアリング機構にはスプリングが入っているため、「カム」の位置次第でステアし、任意の位置では固定できない仕掛けです。

ラジエータグリルが縦格子になっているのですが、『別冊一億人の昭和史・昭和自動車史』(毎日新聞社刊・昭和54年)186ページ下の写真はグリル縦格子、タイヤもニチモのキットと同じホワイトリボンになっています。
(塗装は白黒上下塗り分けになる以前のもので、アリイ1/32改造で作った、2シーター交通PCと同じ塗り分けになっています。)
これに対して、アリイ1/32改造で以前に作ったFS20のように、明らかに「メッシュ」グリルの写真も存在するのですね。
ニチモ・キットの「交通標識」説明シートの「諸元」中に『トヨタFS20型59年60年』という記述があることから推測すると、1959年式が「縦格子グリル・ホワイトリボンタイヤ」、1960年式が「メッシュグリル・ノーマルタイヤ」なのではないか、と考えるのですが、いかがでしょう。



デカール使用は全て諦め、「警視庁」ロゴとナンバープレートを自作。ナンバーはキット付属のデカールに準じました。
側面/フロント/リアのエンブレムは、シルバーのプリンタ出力ができないため、やむなく手書き。アルミテープの細切りを貼ってベースラインにし、その上に「チョコチョコ書き」をしました。

リアのナンバープレートはモーター駆動系のスイッチになっています。したがって「オフ」状態では左にオフセットしています。何事もモーターが「オン」の状態に基準が置かれているところがスゴいです。



ヘッドランプ/レッドビーコン点灯!!

このキットを作ってみて、あらためて考えさせられることがありました。
それは、現在の「プラモデル」の考え方は、「塗り」に偏りすぎているのではないか、ということです。
このニチモのキットには、「塗り」という要素は全くありません。それが「プラスチック・カラー・モデル」というコンセプトであり、フロントの「ヒゲ」までがデカールで用意されるキット内容なのです。「塗り」に対して、「作り」「メカ」「走り・動き」ということがメインになっています。
つまりこのプラモデルは「塗るもの」ではなくて「組み立てて楽しむもの」なのですね。
このキットのように、プラモデルは「ボディ無塗装」で立派に完成しますし、この時代にはそれがごく自然なことだったのです。ボディのプラに厚みがあり、モールドも甘いこともあって、「ホーロー」仕上げのような光沢表面になりました。

これに対して、現在のプラモデル、特に模型雑誌の製作ガイダンスなどを見ていますと、「パーティングラインを消し」「下地のサーフェサー吹き」「塗装」「クリアコート」「研ぎ出し・コンパウンド磨き」をしないと、まるでクルマのプラモデルは完成しないようなトーンで書かれています。
こんな面倒臭いことが足枷になって、みんなの制作ペースや制作人口までが減衰してしまい、メーカーが「完成品」を売り出さなければならないなんて、何かが間違っているとは思いませんか??  業界は自分で自分の足を引っ張っているとしか思えません。

「走らせて楽しむ」かどうかは別として、世の中には「塗るのが得意」な人も、「組むのが得意」な人もいるわけでありまして、要は「塗るのが得意」な人以外が「プラモデル」から離れてしまうような構造を作ってしまったのではないかと思うのです。

「プラモデル的常識」では、黒で成型されている足回りやインテリアを、わざわざ黒塗料で塗装しますよね。「同じ黒でも色調やツヤを変えよう」なんて雑誌には書かれます。しかし「ミニカー的常識」からすれば、インテリアやシャシは黒プラスチックの無塗装のままです。特に著しく実感が損なわれるとは私は思いません。黒に銀や赤やらを入れ、ツヤを変えてそれぞれエアブラシを吹く、なんていう作業に要する時間はあまりにも膨大で、気が遠くなるほどです。
いっそそんなことを止めてしまったら、きっともっとたくさん作りたいものが作れます。合成皮革系のシートなどはどっちみち合成樹脂なんですから、無塗装黒プラスチックの方がかえって自然な質感があるのではないか、とさえ思えます。

皆さんも足回りやインテリアは無塗装、ボディもプラ地をコンパウンドでピカピカに磨いただけて1台完成させてみませんか??
プラスチック/合成ゴム/金属などの素材ハイブリッドで、「作る」ことにウエイトを置いたキットがもっと普及したらいいと思います。タミヤの1/12・スーパーセブンや1/6バイクなんかが、そういう要素を持っていたと思うのですが…。



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