taboo






わいわい賑やかな居酒屋。



仲崎さんとのアレが無くなりすぐ家に帰れる、と思った矢先、居酒屋へのお誘いがあった。





メンバーは“あにまるな”AD陣から、私、鈴木くん、美奈ちゃん、高原さん。
AP陣から、合田くん、中山さん。
D陣から明石さん、芳江さん、佐藤さん、松平さん、そして浜村先輩。

今日は、産休に入った松平さんが『暇だから』という理由でセッティングした飲み会。

で、ついでに代わりで入ってきた浜村先輩の歓迎会もしようって事らしい。



まぁ集まれるメンバーっていう事で、今日は別のところで合コンのなっちゃんは不在。
私は、23歳で今年入ったばっかの美奈ちゃんの横で飲んでいた。

「おーい、一馬に酒飲ませたの誰ですかー。」
「あ、私よー。」
「松平さん・・・コイツ、すっげぇ下戸なんですって。」
「そうなのー?あははは。」
高原さんが、妊婦さんなのにお酒をがばがば飲んでいる松平さんに言う。



あ、先輩もう死んでる。
まぁ、無理もないか。飲み会始まってもう1時間。殆どの人が出来上がってるし。

「あーぁ、松平さん、あんな飲んで大丈夫なんですかね?」
「さぁ・・・」
すると、私の倍以上ビールを飲んでいる筈なのに顔色一つ変わっていない美奈ちゃんが笑顔で言った。
「そういえばくーさん。」
「ん?」
相変わらず変なあだ名で呼んでくる美奈ちゃん。
周りの人曰く、私に懐いてるから故の呼び方らしいけど・・・




「今日もまた、菅野Pに八つ当たりされてませんでした?」




あ、見てたんだあの現場。

ていうか、事情全然知らない筈の美奈ちゃんまで八つ当たりって言うなんて・・・
菅野P、ほんと嫌われてるなー。

「あー分かった?」
「はい。あの人、決まってくーさんに八つ当たりしますもん!」
意外にも手厳しく言う美奈ちゃん。






っていうか、やっぱ菅野P、いつも私に八つ当たりしてたんだ。


予想はしてたけど、どうも理不尽な気がする。




「まぁさ、八つ当たりって言っても軽い程度だからいいけどさ・・・でも、理不尽だよ。」
「ですよねー。」
「大体、なんで私なの?って感じ!」

そうだ。
私は確かに可愛い部下ではないけどさ、仕事ちゃんとするし、礼儀だって忘れてない。
ましてや菅野Pに失礼なことなんて一度もしたことないのに。





すると、美奈ちゃんが苦笑いしながら言った。
「確かに、いくらくーさんが仲崎チーフのお気に入りだからって、ちょっと理不尽ですよね。」
「・・・・・・は?」
よく意味が分からない事を言う美奈ちゃん。
私が、仲崎さんの、お気に入り?
「え?だってそうじゃないですか。いつも雑用とかくーさんばっかり指名して・・・」







雑用指名。




仲崎さんはそうやって会議室に連れ込んで、好き勝手弄ぶ。

どうやら周りはそれを“特別扱い”と、勘違いしたようだ。








「・・・・あのね、美奈ちゃん。」
私はため息をつきながら言った。
「私はある程度経験あるし、多分年齢的にも一番チーフにとって使いやすいだけなんだよ。別に」
“特別”ってワケじゃない。






だって、私と仲崎さんの関係は、恋人のような甘い関係ではない。



全てが、仲崎さんの気まぐれなんだから。







「えーでも・・・」
「ね!美奈ちゃんはチーフにときめいたりしないの?ほら、年上って憧れるって言ってたじゃない。」

これ以上私たちに対する周りの勘違いは聞きたくない。

私は話しを変えようと、いつも通り明るく言った。

「チーフですか?」
美奈ちゃんもいい具合に話に乗ってくれた。
「チーフは・・・確かに完璧ですけど、でもあの冷徹さはちょっと無理です。」
苦笑いを浮かべながら言う美奈ちゃん。
「私は、高原さんみたいなクールなお兄さん系がいいです。」
「お!じゃぁ丁度いいじゃん。今、高原さん彼女居ないらしーよ?」

「あはは。確かに高原さん良いですけど・・・今は、くーさんが一番ラブですから♪」

美奈ちゃんはさらっと可笑しな事を言い、枝豆を摘む。


そういえば、美奈ちゃんってこんな可愛い顔してるけど、両刀だっていう噂、聞いたことある。

「あ、あはははは。」
私は少し引きつった笑みを浮かべながら、ぐいっとビールを飲み干した。



















11時を回ってやっとお開きになった、飲み会。

みんな各々にタクシーや自転車で帰路につく中、私はお金節約と運動の為に、電車で帰宅。

反対方向に家がある美奈ちゃんに駅のホームで別れを告げ、一人電車を待っていた。





すると、





「くーぅ!」

「・・・・・・・・・先輩。」





寝てて酔いが覚めたのか、ちょっぴりご機嫌な浜村先輩。
そっか、先輩は私と降りる駅、一緒なんだ。
「先輩、まだちょっと酔ってます?」
「あぁ酔ってる。」



自分で認めるって・・・


先輩は人懐っこい笑顔を私に向けると、空いていた私の横に座った。
「一人じゃ危ないだろー。送ってやるよ。」
「その言葉、そっくりそのまま返したいんですけど。」
この軽く酔っ払ってる先輩を放って置く方がよっぽど心配だ。
私は立ち上がり、横の自販機で缶コーヒーを買うと、先輩に渡した。
「はい、それ飲んで頭覚ましてください。」
「おーありがと、くー。」

素直に受け取り、缶コーヒーをごくごくと飲む先輩。

そして、一息ついてから、




「なぁくー。」
「はい?」







「俺と、付き合って?」






「は?」

思わずアホっぽい声が出る。
いや、でるでしょ。


「・・・またですか先輩。」

まぁでも、それに私が動揺する筈もなく。




「酔った勢いにしたってそれは笑えないジョーダンです。」








まったく。ホント先輩はお酒に弱い。
サークルの新歓の時だって、ねちねち口説かれたし。



「ジョーダンじゃねーよー。くーはホント、素直じゃないな。」
あはははと笑いながら言う先輩。
そんなやりとりをしているうちに、丁度電車がホームに入ってきた。
「はぁ・・・ほら先輩!電車来ましたよ?」
ほろ酔いな先輩に言う。
すると、何故か先輩はベンチから立ち上がらなくて。




「・・・・先輩?」
「あぁ悪ぃくー。俺、ちょい居酒屋に忘れもんしたから、取りに行ってくるわ。」
突然へらへら笑いながら言う先輩。
「え?それなら付いて行きましょうか?先輩酔ってるし――――」
「大丈夫だって!くー、心配しすぎ。」
先輩はあははと苦笑すると、私を電車に乗るよう促した。
「ほら、電車出るぞ。」
「え、あ・・・・はい。」
いつもになく強引な先輩に、私は大人しく電車に乗り込んだ。
「じゃぁ・・・先輩、気をつけてくださいよ!」



先輩に言うと同時に、ドアが閉まる。
それと同時に、先輩が何か話しかけていた。
「え・・・・・・?」





しかし、ドア越しに聞こえる筈もなく。

『何言ってんだろ。』
よく分からなかったが、私は笑顔で軽く手を振った。

そして、先輩もいつもの人懐っこい笑顔で手を振り替えしてくる。











私は、気付かなかった。







先輩が、嘘ついてたことに。


































「――――――――――いつになったら、本気になってくれるんだ?」