taboo






「ここ、か・・・」

大きなマンション。駅も近く、どうやら部屋も大きそう。
『チーフプロデューサーになったら、こんなとこ住めるんだ・・・』
なんて、呑気な事考えてる場合じゃない。



私は抱かれるんじゃい、ヒーローになりにきたんだ。






私は一呼吸置いてから、呼び鈴を押した。
そして、少ししてからドアが開く。

「へぇ――――――来たんだ。」
相変わらず薄ら笑いを浮かべている仲崎チーフ。
私はなるべく緊張を悟られないように、ぐっと睨みつけた。
「約束、です。」
「・・・どーぞ。」
チーフはクスリと笑うと、中へ促した。





男の一人暮らしって、あまり良いイメージがなかったけど。
「わ・・・」
意外にもちゃんと整頓されており、すっきりした部屋だった。
しかも、思惑通り2ルームある。
一人で部屋に関心していると、後ろから声がかかってきた。
「何?男の部屋、そんな珍しい?」
ずっと薄ら笑いを浮かべている仲崎チーフ。





そういえば、仕事場とは少し、雰囲気が違うような気がした。

まぁ、大体テレビ局ではかっちりした服装だから、こんなラフなのは見た事がないし。




仲崎チーフは、確かまだ29歳だ。
仕事の出来がよく、仲崎さんが案を出した番組は瞬く間に局の人気番組になった。
そして、最年少でプロデューサーに昇格。
それだけでも話題を集めそうなのに、より仲崎さんが目立つきっかけとなったのが、ルックス。




整った顔に、真っ黒な髪、程よい長身で、極めつけはあの甘い声。



芸能人からスタッフまで、いろんな人が仲崎チーフを落としにかかっていた。


まぁ、そのお陰で『最低』という噂が立ったらしいが。





『でも、だからって』

抱かれて嬉しいとか、そんな事はかけらも思わない。
私は、好きになった人をカッコいいと思うタイプだから。









「まぁ、とりあえずそこ、座れば?」
人気の高い甘い声で、私を座るように促す。
そして、律儀にもコーヒーを目の前に置いた。
「・・・・・・・そのカオ、なんでこんな事するんだ?って言いたいのか?」
「は、い・・・」
正直、もっと雑な扱いを受けるのかと思ってた。
そう思ったから、ご飯も食べて、お風呂まで済ましてきたのに。
って、何か、私が気合入ってるみたいで凄く、嫌。
「そんな俺だって、餓えてるわけじゃねぇ。」
すこし苦笑交じりに言う。
「それに、少しお前に興味が湧いたしな。」
「興味?」
仲崎チーフはブラックのコーヒーに口つけて、言った。
「お前は、どこか今までの奴と違う。」
「は?」
「ヒーロー気取りかって聞いて、『はいそうです』なんて答える奴、初めてだよ。」

すると、仲崎チーフはいつもと違う笑い方をした。



どうやら、本当に面白がってるみたい。









なんか、拍子抜け。




仲崎さんはもっと悪人で、冷たい人だと思ってたのに。




「仲崎、チーフ・・・」
「家では“チーフ”付けるな。仕事場じゃ、ねぇんだぞ。」






いつも現場に目を走らせ、冷静に且完璧にチェックをこなす。

若手への駄目出しは、現場監督以上。

黒髪に切れ長の目、そして長身。完璧なルックスなのに、クスリともしないその顔は、本当に怖い。

現に、今日私が頼み込みに行った時も、ずっと怖くて顔を見れなかった。



なのに、なんでこんな、普通なの?





私を安心させようと、わざと普通にしてるのか。
あまり納得出来ないが、私の答えはこれに落ち着いた。









「――――――さて。」
突然、仲崎チーフ―――もとい仲崎さんは、つけていたテレビを消した。
「お前、まさか処女じゃないよな?」
にやにやしながらこちらを見てくる。
私はそれに少しむっとしながら、
「違います。」
「まぁそこは良いとして・・・まさか、マグロ?」
この人の表現は、少し直接的すぎる。
「何が、言いたいんですか?」
「自分で腰振れんのかって聞いてんだ。あぁあと、フェラとか。」
「出来ます!」



何をムキになってるのか。



どうも仲崎さんの言い方にムカついて、私は怒鳴るように言った。

「フェラも出来ますし、騎上位だってなんだってします!」

もう、この男にはどう思われようがどうでもよくなった。
それに、私の経験不足でこの契約が駄目になるなんて絶対に回避しなければいけない。





すると、












「はっ・・・・・!るか、気に入った。」








鼻で笑ったかと思うと、突然、立ち上がった。


そして、ぐいっと私の腕を掴み――――









「え・・・な、なに――――――っ!!!」









隣の部屋のベッドに、ばっと押し倒した。




「え?いや、あ・・・」
「なに?契約だろ?」
いきなりの事で、頭が真っ白になる。
「それとも、怖気づいた?」
月明かりだけが照らす暗闇で、クスクス笑い声が聞こえる。


そうだ、私は

『この為に、来たんだ。』



と、ふとある事を思い出した。
「あ、あの―――――!」
思わず声が上ずる。
「・・・なんだ?」
仲崎さんは、私を見下ろしながら言った。




一つだけ、私からも条件。


「く、口にキスだけは、やめてください。」













これだけは、どうしても、守らなきゃいけない。

馬鹿だな私。

別に、キスしなかったからって、あの人を裏切った事に変わりはないのに。











「・・・どういう事だ?」

薄暗闇でも分かる、怪訝そうな顔。
まさか、本当の事なんて口が裂けても言える筈が無く、私は焦る。
「えっと、あ、あの・・・」
「あの・・・あ、タ、タバコ!タバコが嫌なんです!」
私は咄嗟に思いつき言った。
すると、仲崎さんはどうやら納得したようで、
「あぁ、お前は吸わないんだったな。まぁ・・・それくらいは許してやる。」
仲崎さんの言葉に少し胸を撫で下ろす。
「あ、ありが―――――ぁ!」



すると、突然首筋に、チクリとした痛みを感じた。
「え?あ・・・」
そして、その痕をペロッ舐める。
「ふ・・・」
「条件飲んだんだ。ほら、もっと良い声で鳴け。」



首筋、そして胸元まで広がる赤い痕。
その痕を嬲る舌の動きに、思わず声を上げてしまった。


そして、その間も仲崎さんの手はだんだん服の中に滑り込んでいって、ある一点で止まった。
「あ、ゃ・・・」
ブラの上から与えられる刺激。
それは、丁度頂を避けるようにくるくるとなぞられ、少し物足りなさを感じる。

仲崎さんは、私がそう思ったのに気付いたのか、



「何?もっと触って欲しい?」
「え・・・・やぅ!」



するっとブラの中に手を滑り込ませ、くっと頂を摘んだ。
そして、そのままくりくりと動かす。
「ふぇ!・・・や、あ・・・ぅ!」
まさか、こんなすぐにダイレクトな刺激がくると思わず、嬌声を上げてしまった。



「へぇ・・・良い声じゃねぇか。」
仲崎さんはそのまま服を脱がさせ、あっという間に下着だけにしてしまう。

しかし、自分の身体が晒されている羞恥を感じる前に、仲崎さんからの刺激を感じ取る。
「ぅ・・・ん・・・・・ぁ」
それでも声だけは抑えようと、必死で唇を噛んだ。
すると、


「おい、口あけろ。」
「え・・・」
「命令。」

少し不満そうに言う仲崎さん。
私は刺激を受けながら、訳も分からないままに口を開ける。

「な、なんです―――――――んぅ!」




突然、仲崎さんの指が口に滑り込んできた。




そして、その指は私の舌を押さえたりなでたり、口の中を蹂躙する。
「はぅ・・・ん・・む・・・ぁ・・・」
「指、噛むなよ。噛んだら、お仕置き。」
全然意味の分からない私に手早く説明する仲崎さん。





これも、ルール?




とにかく言われたとおり、噛まないように注意していると――――












「ひゃう!あ・・・んむ・・ぅあ!」



さっきまで摘んでいただけの指が、突然、その頂の上に爪を立てた。
しかも、そのままカリカリと軽く引っ掻く刺激に、思わず声が上がってしまう。


ここでやっと気付いた。
仲崎さんが指を私に咥えさせたのは、多分、声を出させるため。
「う・・・!あぁ・・・ひゃっ」
指を噛まないようにすると、どうしても声が抑えられなくなる。
さっき、私が声を抑えていたのに気付いてたんだ。





「鳴けっつったのに声抑えて・・・後でお仕置きだぞ。」

完全に楽しんでる仲崎さん。

















玩具になれって言った意味を、私はやっと理解した。