taboo






“あにまるな”収録日。


今日も今日とて、良い感じに終わった。






「お疲れ様でしたー!」
スタジオを後にする出演者に挨拶しながら、私はフリップの片付けをしていた。
すると、

「あ、工藤さん。」

後ろには、困った顔の小塚さん。
「ん?どうしました?」
「これ、美術倉庫の横に持っていけって言われたんだけど・・・」
小塚さんはオロオロしながら、私に一枚のメモを渡してきた。




見ると、そこには、今日の企画で使われいていた小さな道具のリストが書かれていた。





それは、歳のわりに実は新人ADである小塚さんには、到底分からないであろう内容で。






「・・・これ、誰から頼まれましたか?」
「菅野Pだけど。」
「はぁ・・・・」

どうやら、鬱憤晴らしの標的が、私から気の弱い小塚さんに移ったみたい。
私はあらためて菅野Pに呆れながら、小塚さんに言った。
「これは私が持って行っときますよ。なんとなく、分かるし・・・」
「ごめんな、工藤さん。俺ホント、よく分からなくて・・・・」
「気にする事ないですよ!じゃぁこれ、お願いしますね。」
私は笑顔で答えながら、小塚さんにフリップを手渡した。
『えーっと。』
とりあえず道具を取りに行こうと、ぱっと回れ右をした。




すると、




「っわ。」
「―――悪いな。」



振り向いた瞬間、誰かとぶつかった。





そして、それと同時に頭上から聞こえる、聞きなれた甘い声。




「あ・・・・」
見上げると、いつものあの顔があって。







後方不注意。仲崎さんがいる事に気がつかなかった。
「・・・す、すみません。」
私はとっさに視線を逸らし、頭を下げる。


すると、









「――――――相変わらず・・・」










「え?」
突然頭上から聞こえてきた呟きに、私はぱっと顔を上げた。
「あ、いや、何でもない。」
すると、いつもは嫌なくらい目を合わせてくる仲崎さんが、ぱっと目線を逸らして。

なんだか・・・
『ちょっと、不機嫌?』
少しだけ、眉間にしわがよってた気がする。
まぁ毎度の事だけど・・・今日の仲崎さんは、いつも以上に心が読めない。
「おつかれー。」
「あ、お疲れ様です!」
ちょっといつもと違う仲崎さんの様子を疑問に思いながらも、私は通りすがりの人に笑顔で挨拶した。
「・・・・・じゃぁ、失礼します。」
そして再び、不機嫌そうな仲崎さんに頭を下げ、さっさとセットの方へ向かった。





この前は私の事“しかめっ面”呼ばわりしたクセに。
仲崎さんも十分顔怖いですよ。




私はそんな事を考えながら、メモに書かれた物を探した。












――――――そういえば、いつからだろうか。


あんなに嫌ってた仲崎さんと、普通の会話が出来るようになったのは。




まぁ、普通といっても、番組関係の事から、ちょっと話が脱線するだけ。
よっぽど高原さんや浜村先輩との方が、会話が多い。
だけど・・・仲崎さんとの会話は、ちょっと、私の中で違ってて。







ちょっとずつ、本当にちょっとずつ伸びていく、私と仲崎さんの会話。


そして、仲崎さんの事を考える時間も、ちょっとずつ増えていく。



それらが、どうしても私の中の“あの人”を消そうとしてる気がする。
『忘れたほうが、楽だよ?』

いつか、誰かに言われた言葉が今更頭の中で蘇ってきて、










『るか―――』

“るか!”









勝手に被さる声の意味なんて、全く分からなかった。