taboo






懐かしい風景に、覚えのある匂い。



「そっからケーブル通して!」
「平岡さん、入られましたー!」
「おい!テープチェックまだか!?」
慌しく動き回るスタッフの中で、ただ私は、ひたすらロケ車の中にいた。


「7600、円・・・」
私に与えられた仕事は、今回を含めたロケ代の集計と、タイムテーブルの修正。
『他のスタッフはほら、何も知らないでしょ?だから、ね。』
本気で私の事を心配してくれる、なっちゃんの計らいだった。









馬鹿だ。私だけふさぎ込んで。



こんなにこの場所が怖いんなら、無理してまで来る必要なんて無かったんだ。


それに辛いのは、私だけじゃない。








「・・・・・はい、分かりました!・・・・はい・・・」

私の目線の先にいるのは、笑顔でディレクターからの指示を聞いている成実の姿。




実の兄が無くなったこの場所。
絶対に、私なんかよりもっと辛い筈なのに。




『お兄ちゃんの所為で私がこの仕事断ったら、きっとお兄ちゃんに怒られちゃうよ!』




気丈に笑う成実は、私の何倍も強かった。








「・・・・・・馬鹿、だ・・・」
思わず口からでた言葉。
自分への酷い自己嫌悪を抱きながら、私はタイムテーブルを手に、席を立ち上がった。



もうロケバスの外に行かなければならない。

そして、それからずっとオープニングを取り終えるまで、私はその場にいる。




ドアへ向かう足取りが、重い。
それ以上に気が重いまま、私はフラフラとロケバスから足を踏み出した。













その時、目の前に広がったのは。
















青い海



青い空



整備された公園



綺麗な植え込み



子供達の笑い声に



燦々と降り注ぐ太陽の日差し














そして















「工藤、ちょっと――――工藤?」




視界の隅にはあのベンチがあって























『結婚してほし―――――――――』
「悠、樹――――――――――――――――」




















「っおい!!!」








誰かの声と共に、目の前が真っ暗になった。