taboo






頭が痛い。
身体もだるい。
何より、

「・・・・・・・」

ココロが、痛い。







仲崎さんから契約白紙の事を告げられて、もう3週間。


今日は、月曜日。
やっぱり、連絡が来ることはなくって。









仲崎さんは、どうして私との契約を無しにしたのか。


全然分からないままで、ただただ、私は一人の月曜日を過ごしていた。







今まで続いていた、おかしくて、でも普通になりつつあった契約が無いだけ。
なのに、どうしてこんなに苦しくて、辛いのか。
全然、理解出来ない。
「なんで、よ・・・」
全然理解出来ない私は、仲崎さんが契約を断った理由ばっかり考えてて。



仲崎さんが私に飽きた?


もう、成実が安定してきたから?


それとも―――――




「最、悪・・・・・」
3番目の理由を考えようとして、すぐ頭の中をかき消そうとする。









“仲崎さんに、好きな人が出来た、から?”









最低。
最悪。
私には全く関係ないのに、3つ目の理由だけは、どうしてもこの2つの言葉が浮かぶ。
「・・・・・・・・」
仲崎さんに好きな人が出来たからって、私には関係ないことじゃない。
大体、今までだって仲崎さんに恋人が居ないだけで、私以外に良い人がいたかもしれない。
私は、
「関係、無い・・・・・」

関係ないのに。
なんで、こんなに泣きそうなんだろ。



私はベッドから一歩も動かずに、ただぼーっとテレビを見つめていた。











すると突然。







「・・・・・あ・・・・」
小刻みに震えるケータイ。
見ると、ディスプレイには『なっちゃん』という文字が表示されていた。
「なっちゃん・・・・・・・・」
私はのろのろとした動作のまま、ケータイを開いた。
『あ、もしもしー?くーちゃんー?』
「なっちゃん・・・」

すると、なぜかなっちゃんの声を聞いたら、何かどうしても、堪えられなくなって。

「なっ・・・・・ちゃ、ん・・・・・・・・っ。」



今までどうにか流さまいとしてきた涙。
それが、なっちゃんの声を聞いた途端に、突然あふれ出してきた。


『え!?ちょ、ちょっと・・・!くーちゃん!?』
















もうやだ。




「う、あぁん・・・・・!」









会いたい、よ。































あれから、なっちゃんは私が落ち着くまで待ってくれて。


『くーちゃん、落ち着いた?』
「う、ん・・・・・」
馬鹿みたい。こんなに声あげて泣くなんて。

すると、
『ねぇ、くーちゃん・・・やっぱ何かあったんでしょ?』
電話越しにも伝わる、なっちゃんの心配そうな声。
もう、隠し切れない。
誰かの、答えが聞きたい。
「ねぇ、なっちゃん・・・」
『ん?』


「あのね・・・最初は―――――」













最初は、嫌いで。


“・・・なんの、つもりだ?”




本当に、最低な人だなって思って。


“そうやって、女は友情を確かめ合うんだろ?馬鹿らしい。”




こんなにかっこいいのに、変態で。


“んじゃ、本番。楽しませろよ?”




でも、なぜか時々、優しくて。


“朝飯くらい、サービスしてやる。つっても、もう昼飯か。”




時々、変で。


“番組の心配する前に、自分の心配をするべきだろ!”




おかしくて。


“お前はずっと、俺の玩具なんだ。他の奴の所になんか―――――――”






でも、



“―――――休養の連絡は入れといた。とりあえず、3日は仕事来るな。”



やっぱり、最後は優しくて。







「私は、まだ悠樹が好き。忘れられない。」
「・・・うん。」
「でも、このまま―――」

仲崎さんと、このまま終わりなんて、絶対に嫌。








『・・・・・・アンタさ、馬鹿?』

「・・・・・・・・・え?」


すると、突然電話の向こうから聞こえてきたのは、思いがけない言葉で。
私は突然の事に驚き、まぬけな声を出してしまった。
「あ、の・・・」
すると、なっちゃんはふぅ、とため息をつきながら。
『その人がさ、どうしてくーちゃんをそんないきなり突き放したのかは知らないけどさ・・・』
そして、なっちゃんは諭すように、
『そんなの関係無いじゃない。アンタは“嫌だ”って、言ってないんでしょ?』
「う、ん・・・・」

『なら、ちゃんと言って、それから悩みなさい。それから、ちゃんと―――』


―――自分の気持ちを、正直に伝えなさい。







自分の気持ちを、正直に。





そういえば、今まで、仲崎さんに、私の正直な気持ちを伝えたことがあっただろうか。

変だと思ってた事。
不思議に思ってた事。
悩んでだ事。
そして、嬉しいと思ってた事。


一つも、伝えてない。
「私・・・・・・・言わなきゃ、だめな事、いっぱいある・・・・・」
『後悔、したくないでしょ?』
「したくない。」
『ほら。だからちゃんとそれ、言うの!・・・・・・分かった?』
「うん・・・う、ん・・・・・・」






今自分がやるべき事、やっと分かった。



分かっただけなのに、また涙が溢れ出してきて。




『って、あぁ!ご、ごめんって!くーちゃん、泣かないでってー!』

電話の向こうから聞こえてくる、なっちゃんの少しあわてた声。





ありがと、なっちゃん。



今はまだ、涙が止まらないから。
これはまた、後で言う事にしよう。






























『あーでも、よかったぁ・・・最近くーちゃんが塞ぎこんでんの、私の所為かと思ってた。』

「・・・・へ?・・・」
なっちゃんの言葉に、私は鼻をすすりながら返事をした。
すると、なぜかすこし安心したように、
『いやさ、前くーちゃんがロケの日、倒れたじゃん?』
「う、ん・・・」
『そん時さ、言っちゃったんだ。仲崎チーフに。』

「・・・・・・え・・・・・・・?」




『くーちゃんがこの公園で、恋人を亡くしたって事。』








え・・・・・・・?



「なんで・・・・・!」
『だって、仲崎チーフすっごいくーちゃんの事心配してて・・・』
「嘘、だ・・・」
『嘘じゃないよ。必死にくーちゃん抱きかかえて、名前呼んでたんだよ。』
「・・・・・・」
『これはさ、言う必要ないって言われたんだけど・・・』


なん、で?

なんで仲崎さんが?









『あの日、家まで送ってったの、仲崎チーフなんだよ?』
















小さくって分かりづらい、ちょっとした優しさ。




もう、何度仲崎さんがくれた事なんだろうか。








「仲崎、さん・・・・・・・」

『え?何?くーちゃん?』











自分の気持ちに気付いた時には、すぐにケータイを投げ出して、



「・・・・・・・っ!」







すぐに、部屋を飛び出して行った。