taboo番外編






幸せを願う、誰よりも






るか、大好きだよ。





だから、もう泣かないで?









私とるかの出会いは、大学の英語のクラス。


『・・・辞書、貸そーか?』

英語がニガテで困っていた私に、顔見知りでも何でもないるかは、辞書を貸してくれた。







るかは、女の子にすごく優しかった。

何より友達を大切にして、いつも笑顔で。

そんなるかを、私は大好きになった。

るかも私の事を凄く気に入ってくれて、すぐに親友になった。





お昼も、サークルも、買い物も、イベントもなんでも。
るかと私はいつも一緒。



運命だったのかもしれない。



だって、こんなにもるかのこと、好きなんだもん。










なのに、そんな仲を邪魔する人が一人。











『工藤さんだっけ?俺惚れたわ。』







ある日家に帰ったら、台所から声が聞こえた。


見ると、そこには同じ顔をした男が一人。
『・・・るかの事?』
四ノ宮悠樹。私の、双子の兄だ。




明るい性格のお兄ちゃんは、すらっとした長身に、正当派のカッコよさ―――まさに、モテモテだった。
しかし同時に飽きっぽく、


“んぁ?アイツもう良いわ。重い。”


今まで一人の女の子に惚れ込むことはなくて。
だから、今回も最終的に飽きて、やめちゃうと思ってた。






『そう、るかちゃん。』
『悪いけど、るかは駄目。』
『なんで?性格良いんだろ?』
『だから駄目なの!』



大好きな親友を泣かせるのは嫌。


だから、久しぶりにお兄ちゃんと大喧嘩しちゃって。




『どーせお兄ちゃんは、またしばらく付き合ったら“飽きた”とか言ってるかの事ぽいするんでしょ!?』
『何で決め付けんだよ!』
『と、とにかく!るかを泣かせるなんて絶対だめ!』
『お前はアイツの何なんだよ!?』
『親友!』
で、あの時の私は馬鹿みたいに叫んで。








『るかの事、大好きなの!』








まだお兄ちゃんとるかが付き合うって決まったわけじゃないのに、兄妹で馬鹿みたいに喧嘩した。
ほんと馬鹿だなぁ私達。
でも、私はその後のお兄ちゃんの態度で、安心する事になった。












いつの間にかお兄ちゃんとるかが付き合うようになって。



お兄ちゃんは、本当にるかを大切にしていた。


るかも、私にも見せた事ないような、甘くとろけそうな顔をしていた。




私の知らないるかを知ってるなんて、お兄ちゃんはズルい。




でも、私はあくまで親友。
だったら、親友の彼氏の妹として、全力でるかを応援しなきゃ。












私たち四ノ宮兄妹は、すっかりるかを取り合うようになって。



それでも、るかも私もお兄ちゃんも、みんな幸せだった。






大学を卒業しても、るかはAD、お兄ちゃんは企業の企画部、私はグラビアで、それぞれ頑張ろうってなった。














なのに。









『成実!悠樹が――――!』






切羽詰ったお父さんからの電話。
お兄ちゃんが、るかと事故に巻き込まれた?2人とも重体?


水着を着たままジャージを着て、急いで向かった病院には――――











沢山の管に繋がれたるかと、お兄ちゃんがいて。











『・・・ん、で・・・・』

集中治療室の前で泣いているお母さんと、るかのお母さん。
少し離れた所では、るかのお父さんが頭を抱えていた。
『飲酒運転のトラックが、海浜公園に突っ込んできたんだ。』
隣から聞こえてきた、何かを必死に堪えたような声。



そうだ、今日は、お兄ちゃんがるかにプロポーズするって言ってた日だ。






何度も私に指輪の雑誌を見せ『コレは?』って聞いてたお兄ちゃん。
兄妹2人で喧嘩しながら討論して、でも、最終的にはお兄ちゃんが決めて。

あんなに幸せそうに笑うお兄ちゃん、初めて見た。




『で、どこでプロポーズするの?』

『アイツ、海浜公園が好きって言ってたから・・・』

『・・・もっといい雰囲気のレストランとかにしないの?』

『い、いいんだよ!今日は指輪渡して、婚約してもらうだけ!結婚前にはもっと良い指輪をあげるんだよ。』

『うっわー、お兄ちゃん頑張るね。でも・・・断られたらどーすんの?』

『縁起でも無いこと言うなよ・・・』

『ご、ごめんって!それに・・・るかがお兄ちゃん断るわけないじゃん!』

『成実・・・・・・・・今日初めて、お前を良い妹だって思ったよ。』

『・・・・お兄ちゃん、私の事馬鹿にしてる?』

『あはは。でもホント、成実のお陰で、緊張取れたわ。』

『もう。・・・・・・るかを、泣かせないでよ。』

『当たり前。今日から、アイツをお前の姉ちゃんにしてやるよ!』

『ばーか。いってらっしゃい。』

『あぁ、いってくる。』









そして、私の世界で一番大好きな人たちが幸せになろうとしてた時。







飲酒運転で手元が狂ったトラック運転手は、2人に突っ込んで行き――――――











運転手は軽症。
そして、2人の身体は、お兄ちゃんがるかに覆いかぶさるようにして発見された。




お兄ちゃんは、咄嗟にるかを守ったらしい。


救急隊員の人が、悲しそうに話してた。























それから3日後。






『るかぁ!』





私とるかのお母さんが見守る中、るかは薄っすら目を開けた。
『・・・・・・・・き・・・・・・は・・・』
『駄目!喋っちゃだめ!成実ちゃん、急いで先生を呼んで!』
『はい!』






“悠樹は?”







多分、こう言いたかったんだと思う。

けど。









『成実、悠樹は・・・・?』
ちゃんと話せるくらい回復して、投げかけられた質問。


『るか・・・・』



お兄ちゃんは、








『もう・・・・・・・いないの。』












事故の次の日に、息を引き取ったお兄ちゃん。
お父さんもお母さんも泣いた。そして私も。




でも、なんでかなぁ。

るかは、絶対に人の前で涙を流さなかった。
お兄ちゃんの遺体が置いてある安置室に行って、ぽつりと一言。






『意味、分かんない・・・・・』










それから、るかは少しだけ、変わった。


1週間誰とも口を利かず、食事も取ろうとせず、トイレに行くと言っては、いつも窓から外を眺めてて。













ある日突然



『・・・・・・私が、生きなきゃね。』



突然、私に向かって笑顔で言った。
周りの人は感動して、報道番組にも感動秘話として取り上げられ、私の両親もるかの両親も喜んだ。



“悠樹の大切な子だもの。るかちゃんだけでも、生きてて良かった・・・”
お母さんがそう言って、


“悠樹君は、アンタを守ってくれたのよ。るかは、本当に大切にされてたのね。”
るかのお母さんがそう言って、


“恋人の分も生きると誓った、工藤さん・・・これこそが、真実の愛なんですね。”
朝のニュースで、よく分からないコメンテーターがそう言って。






局からの取材に笑顔で答え、懸命に状況を説明するるか。










けど、私は知ってるよ?











本当は、お兄ちゃんの後を追って、死にたかったって事も。




でも、お兄ちゃんが身を挺してまで守ってくれた自分が、死ぬわけにはいかない事も。









るかは生きようとしたんじゃない、死ねなかったんだ。

一番愛する人が居ないこの世界で、生きていくしかないるかは・・・








『成実は大丈夫。私はずっと、味方だからね。』



るかは、お兄ちゃんとそっくりな私に、重ねてるのかもしれない。
でも、それでるかが救われるんなら、私は全力でお兄ちゃんの代わりに、なってみせる。







だから、るか、お兄ちゃんの事でもう泣かないで?




前みたいに、笑って?






















でも、もうその必要は無いみたい。



「ごめん!今日は、仲崎さんとご飯行くの・・・」
「もー!るかまたぁ?」
「ごめんってー!」
「あーはいはい。私はどーせ2番目の女ですよーだ。」
「う・・・・で、でも!」






本当に幸せそうな笑顔で、




















「成実は、私の一番の女だよ。」










「・・・・・・私も!」