taboo






「るーかー!!!!!」



「・・・・成実?って、うわぁ!」




動物ふれあい型バラエティー『あにまるな!』が始まって、もう何ヶ月経ったか。

少し前の春のスペシャルも無事に高視聴率。
新人のスタッフが入ってきて、私もチーフAD。
そんな、少し忙しい今日この頃、突然成実が抱きついてきた。

「ちょっと、成実?どーしたの?」
「あのね!」

私より身長高くて大人っぽいのに、やっぱり幼く見えてしまう成実。




そんな成実を見上げると、満面の笑みを浮かべて、












「前のスペシャルの私のコーナー、番組内の視聴率で一番だったんだって!」












局内の廊下で人目を気にせず、ぴょんぴょんと飛び上がる成実。











「え―――――――えぇえ!?」





びっくり。
本当にびっくり。




最近成実のコーナーが人気出てきてたのは知ってたけど・・・
まさか、スペシャルで番組内の瞬間最高視聴率を出すなんて。
「それでね!あのね!プロデューサーさんに褒められたんだよー!あとね、作家さんにも、演出家さんにも・・・」
呆気にとられている私そっちのけに、褒めてくれた人の名前を挙げる成実。
「あとね、事務所のしゃちょーと、赤司先輩と――――――るか?」
「・・・・・ホント、おめでとう。」



ずーっとずーっと頑張ってきてた成実。


衛生状態悪い国や危ない国に行って無茶なことをリクエストされても、笑顔でずっとこなしてた。


そうだ、こんなに頑張ってたんだもん。
報われるなんて、最初から、分かってた。







そんな事を思い出し、ちょっとうるっときてしまって。

私は成実に見られまいと、今度は私から抱きつき返した。


「るか・・・今まで、本当にありがとね。」
「・・・何言ってんの。私は、成実のファン第0号だよ?」
「そーだったね。」
「写真集も雑誌の特集もDVDも、全部初回版持ってんだから。」
「ホント、そんな人全国に殆ど居ないよ。」
「ここに一人、いますから。」
「あはは。」
人の目も気にせず、廊下で抱き合ったまま笑い合う私達。






「・・・あ!私、もう行かなきゃ!」


すると、突然、時計を見た成実が言った。

見ると、時計の針は丁度11時をさしていて。
「また“あにまるな”のロケ?」
「うん。次はコンゴに行くんだよ。」
「た、大変だね・・・・」
「ふっふっふ〜。大変だけど・・・これからまた、新たに頑張らなきゃなんだから!」
「・・・そーだね。私、応援してる。」
「うん!じゃ、また1週間後ね〜!」
「うん―――って、1週間も!?」
「あははは!ばいばーい!」



元気に私へ手を振りながら、廊下を走っていく成実。





私は嬉しい気持ちのまま、そのスタイル抜群で、でも幼い背中を見つめていた。


















すると。













「よ。」
「へ?」



突然頭をぽんと叩かれ、おもわず間抜けな声が出てしまった。

そして、その声の方を振り向くと、






「―――――仲崎さん!」











つい最近結ばれた、最愛の人がいて。










「ロケ終わりか?」
相変わらず感情があまり感じられない声色のまま言う仲崎さん。
それでも、いつもの仕事場とは違う、私専用の声。
「はい。今日はもう、これで終わりです。仲崎さんは・・・」
「これからあにまるなの会議。前のスペシャルの反省してから、番組構成をちょっと変えてみる。」
「構成、変えちゃうんですか?」
「あぁ。わんフォトを犬以外のペットもOKにする予定だ。」
「へー・・・・」

そういえば、今日は確か、いつもの仲崎さんが担当してる番組の収録が無くなった筈。
もしかしたら・・・その後、会えるかも。


「ん?なんだ?」
私が何か言いたげなのが分かったのか、仲崎さんが聞いてきた。
「あ、いや・・・その後は、もう終わりですか?」
「会議の後は遺跡歩きスペシャルのロケチェック。」
「え・・・」
「今日中に見といて欲しいらしい。」
「そうです、か・・・」




相変わらず忙しい仲崎さん。


ちょっぴり期待していた私は、少しだけ肩を落とした。




『まぁでも。』

・・・わがままは駄目だよね。仲崎さん、頑張ってるんだもん。
ただのADの私とは、忙しさが違うしね。
「相変わらず忙しいですね。無理しない程度に、頑張ってください。」
私は、仲崎さんの前だけでも“良い恋人”を演じようと、いつも通り笑顔で言った。
「それじゃぁ、失礼します。」







すると。







「るか。」






去ろうとした私を、突然呼び止める仲崎さん。



そして、“彼”が私の事を“るか”と呼んだ時が、2人だけの、小さな合図。











「―――――なんですか?ま・・・雅臣、さん・・・」




恋人同士になって、2番目に交わした契約。




それは、仕事場以外では、お互いを名前で呼び合う事。


そして、どちらかが呼べば、もう一人も名前で答える事。







この歳になって、ちょっとこっぱずかしい契約だけど、それがすっごく嬉しくって恥ずかしくって。
まだ、私は慣れないかな。








でも、



「明日は、いつも通り。」

このやり取りはもう慣れた。
「ウチ、来いよ。」
今日は土曜日。“あにまるな”の収録があるのが日曜日。
そして、2人のお休みが重なる、月曜日。
「はい。」
契約前も契約解除後も、2度目の契約後も、変わらない情事。




ただ変わったのは、





















「――――待ってるぞ。」











ただ“好き”という気持ちが重なった事。